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弱者のマーケティング戦略が育てたサイボウズの生存術 VUCA時代に求められる考え方とは?組織の生産性を上げる「楽しさ」の作り方(2/3 ページ)

» 2019年12月11日 07時30分 公開

VUCA時代に求められる考え方

 昨今では、「アート思考」という言葉も出てきました。その発端になったともいえる山口周さんの著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社新書)では、経営を「アート」「サイエンス」「クラフト」の3つに分けて説明し、この3つをバランスよく共存させて意思決定することが、質の高い経営につながると指摘しています。

 つまり、これまで重要視されてきた分析や論理といったサイエンスのみでは、現在を含めたこれからのVUCA時代(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭字語。予測が難しい不確かな時代といった意)において正しい判断ができないということです。

 これに異を唱える人はあまりいないでしょう。10年先が、いや5年先がどうなっているかも分からない時代です。そこにおいて緻密な過去の分析数値がどこまで役に立つのか、まさに不確かです。そこで大事にすべき感覚が「直感」、自分なりの「真・善・美」だということです。

 特に情報が溢れすぎている昨今では、「人の直感を刺激して認知してもらう」ことが必要です。どの業種・職種においても、他社との差別化のためのアイデアが求められますが、「やらされ感」はそれを阻害します。「真面目にふざける遊び心」がアイデアを生むのです。「遊び」はまさに「直感」そのもの。子どもは「直感」的に遊んでいるでしょう。仕事に「ふざけ」や「遊び」を入れることが大事であり、当然ながらそれが「楽しさ」も生むのです。

ひらめきを生む「遊び心」

 仕事に「遊び」を入れることで、より共感する人が増えます。若手から意見が出ない、のではなく、真面目で面白くないから意見が出ない、意見してもしょうがない、と思ってしまうのです。過去の情報を分析・理論化することは大切ですが、それを判断の基軸にするのではなく、それをもとに「遊び」を許容して、さまざまなアイデアや発想に結び付けることが大事です。

 また、人事や製品企画職だけがアイデアを求められるわけではありません。経理や法務であっても、不確かなものに「ルールだからできない」と対応するのではなく、「この部分では適用できるのではないか」といった柔軟な発想が必要ですし、それが他社との差別化にもつながります。サイボウズの株主総会は、株主以外も招待してワイワイ楽しくやるようになりました。これも「他社との差別化」につながり、こうした1つ1つが会社のブランドイメージを形成していくのです。

 社員のリテンションや採用が難しくなっている現在、「遊び」の許容は思った以上に重要な要素になっているかもしれません。正解はありません。ただ、自分の貴重な時間を使うなら「楽しい」ほうがよいですよね。なぜなら、人間は高度な脳を使って「遊べる」動物ですから。

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