日本が狙われる ロシアのドーピング処分で暴れる「クマさん」の危険世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2019年12月12日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 そして15年、WADAはドーピングについての報告書を発表。陸上競技のロシア人アスリートには根深い「不正の文化」があると指摘し、ロシアを国際大会から排除すべきだと主張した。国際陸上競技連盟(IAAF)はその報告書を受けて、ロシア陸上競技連盟(RUSAF)を大会から締め出すことになった。

 そしてその後、ロシアで確立していた組織的なドーピング行為が明らかになっていく。16年にはまた別の暴露話が噴出。ロシアの反ドーピング研究室の元所長の証言が、米メディアで大きく報じられて大騒動になった。14年のソチ冬季五輪で、国家主導のドーピング行為が行われ、アスリートから摂取した検体をクリーンな別の検体と入れ替えていたことも明らかになった。

 これにより、過去にさかのぼった再調査なども行われ、多数のロシア人アスリートがズルをしていたことが判明したのである。

 そんなことから、16年のリオ五輪では出場を禁止される選手も出てきて、ロシア選手は通常よりも少なくなった。17年12月には、IOC(国際オリンピック委員会)がついに処分に乗り出し、18年の平昌五輪でロシア選手を締め出すことを決めた。

組織的なドーピング行為が明らかになった(写真は記事と関係ありません)

 その後は、国際大会への復帰に向けてWADAやロシアも動き出していた。その過程で、WADAはロシアに対し、反ドーピング研究室を通じてそれまでのデータを提出するよう要求し、ロシア側もそれに応じた。

 しかし、である。

 19年9月、提出されたデータに矛盾などが見つかり、ロシアはあらためて出場停止処分になる。つまり、またデータをごまかしたのである。そして、カタールのドーハで行われた世界陸上に、ロシア選手は出場できないままになった。

 そして結局、4年間の追放処分という決定が下されることになったのだ。しかし、まだロシアが不服を申し立てる可能性は残っている。

 本来なら、多くの人にとって、ロシアはしょせん「自業自得」で、「へ〜出場しないんだ」という話で終わるところだが、実はそれでは済まない可能性がある。というのも、冒頭で触れた通り、「クマさん」の存在がちらつくからだ。

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