日本が狙われる ロシアのドーピング処分で暴れる「クマさん」の危険世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2019年12月12日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

平昌五輪に襲い掛かったファンシー・ベア

 そして彼らは、18年に平昌の冬季五輪でもサイバー攻撃による妨害工作を実施している。

 どんな攻撃だったのかというと、まず何カ月も前から関係各所へのサイバー攻撃を行い、公式サイトや公式アプリが被害を受けていた。不具合も確認されている。大会初日には、平昌オリンピックスタジアムの自動入場ゲートが使えなくなり、運営側はゲートを手動に切り替えざるを得なくなったという。

 さらに、開会式の前には公式サイトが数時間にわたって使えなくなり、チケットの手配などにも支障が出た。会場周辺のWi-Fiも使えない状況があったという。直ちに調査を行ったセキュリティ会社なども、最終的には、これらの攻撃が情報を盗むような攻撃ではなく、データを消去して運営に不具合をもたらそうとしていたと結論付けた。

 そして専門家らは、ファンシー・ベアによる攻撃の動機がドーピング問題で冬季五輪から国として締め出されたことに対する“報復”だったと分析している。ちなみに、そのために使われたマルウェア(悪意のある不正なプログラム)は、「オリンピック・デストロイヤー」と名付けられている。五輪を破壊するのが動機だったということだ。

東京五輪も、ロシアによるサイバー攻撃の危険性が高まっている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そんな攻撃を行ったロシアが、平昌に続いて、再び五輪という世界的なスポーツイベントから締め出されることになるのだ。台湾のサイバーセキュリティ企業の関係者も、筆者に「ロシアが平昌のときと同じようになったら、東京もサイバー攻撃を受けることは間違いないでしょう」と述べているし、米国の元諜報機関関係者も「またドーピングで恥をかかされたら、ロシアが大会を妨害しようと動くに決まっている」と不吉な指摘をしていた。

 つまり、東京五輪のタイミングで、ファンシー・ベアなどのロシア政府系ハッカーが日本をサイバー攻撃する可能性があるのだ。すでに中国や北朝鮮の政府系ハッカーらによる、東京五輪に向けたサイバー攻撃の準備は始まっているといわれている。数多くのフィッシング・メールやスピアフィッシングメールが確認されているし、筆者もセキュリティ関係者がダーク(闇)ウェブ(地下サイト)などで検知しているフィッシングメールの実物などをいくつも目にしている。

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