セブンに電通、吉本興業…… 各社が「ブラック企業大賞」にノミネートされた理由2019年は9社(2/2 ページ)

» 2019年12月13日 17時11分 公開
[ITmedia]
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・長崎市: 07年7月、長崎市の原爆被ばく対策部長(当時)が女性記者に対して性暴力をふるう事件が発生。同年10月頃から内部調査が行われたが、当該部長が自殺したことで、加害者の主張を聴取するのみで調査が終了した。これを受けて市長は記者会見を開いたが、被害者への謝罪はなかった。14年には日本弁護士連合会(日弁連)が市に対して、女性の名誉回復に向け、謝罪文と性暴力防止策について勧告したが聞き入れなかった。19年4月に女性記者は損害賠償を求めて市を提訴している。企画委員会は「圧倒的な力関係の中で、情報を引き合いにして報道記者の人権と自由を奪うことは、報道の自由だけでなく市民の知る権利をも侵害する」と指摘している。

・トヨタ自動車: パワハラが原因で、男性社員が自殺した問題で話題となった。男性社員は15年4月に入社し、16年3月に本社に配属。日常的に上司から「バカ、アホ」と言われるなど、パワハラを受けていたという。3カ月間の休職を経て復帰したものの、16年10月に社員寮の自室で自死。男性社員の死後、遺族が労基署に申請したところ、パワハラが原因で適応障害を発症し、復帰後も治癒していなかったとして19年9月に労災認定された。「パワハラが社会的に大きな問題になる中で、日本を代表する大企業が新入社員を短期間に自死まで追い込んだ事案であり重大である」として選出された。

・三菱電機: 14〜17年にかけて男性社員5人が長時間労働によって精神疾患などを発症し、うち2人は過労自死していたことが18年に発覚。「ブラック企業大賞2018」の大賞を受賞した。子会社であるメルコセミコンダクタエンジニアリング(MSEC)でも17年末に40代の技術者が自死。こちらも長時間労働による労災と認定されている他、19年8月には再び三菱電機で20代の男性新入社員が自死。教育主任の30代男性社員が、自殺教唆の疑いで書類送検されている。

・吉本興業: 所属タレントが振り込め詐欺グループの宴会に金銭を受け取って参加していた「闇営業」問題が発覚した芸能プロダクション。従業員に過労死ラインを超える残業をさせていたとして、12年3月に労基署から是正勧告を受けていた。18年には「就業規則の変更を労基署に届けない」「休日勤務の割増賃金を十分に払っていない」といった問題で、再び勧告を受けた。また、“闇営業問題”が報じられる課程で、社長による所属タレントへのパワハラや、ギャランティーの不公平な配分なども明らかになった。企画委員会は「近年、芸能界における労働問題がクローズアップされ、タレントの労働者性についてもさまざまな議論がある。そうした問題の1つの象徴事例としてノミネートした」とコメントしている。

・楽天: 16年6月に男性社員(当時)が会議で激高した上司から首付近をつかまれ、壁際に押しつけられ、頸髄を損傷。男性は手足にまひが残り、うつ病を発症。現在も療養しているという。男性は「社内のパワハラ相談部署に掛け合ったが調査されず、配置転換の希望も受け入れられなかったため、退職せざるを得なかった」としており、17年8月に労災認定を受けた。「大企業における企業内暴行事案として看過できないためノミネートした」(企画委員会)という。

 ブラック企業大賞は、労働環境の悪さなどに問題がある企業を選出し、皮肉を込めて賞を贈る企画。12月22日までWebからの一般投票も受け付け、企画委員会の審査などを経て決定する。大賞と合わせて「Web投票賞」や「特別賞」なども23日に発表予定。例年授賞式には受賞企業を招いているが、これまで出席した企業はないという。

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