「社長として重大な責任を感じている。当社の最大の誤りは、『仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながる』という思い込みを前提にしたまま、業務時間の管理に取り組んでいたことにあると考えております」――。
2017年9月22日。東京簡易裁判所に出廷した電通の山本敏博社長は、こう謝罪しました。
罪状は「労働基準法違反」です。検察側の冒頭陳述によれば、「36協定」の上限を超える残業をした社員は毎月1400人前後(14年度)。東京五輪・パラリンピック関連業務を担当する機会を失わないために、36協定の上限時間を最大100時間に引き上げ、形式的に違反の解消を図るなど、極めて悪質でした。
法人としての電通と当時の上司の部長が書類送検され、上司らは不起訴処分に。一方で、法人としては労働基準法違反罪で略式起訴となりました。
しかしながら、東京簡裁には電通社員の出退記録など大量の証拠が押収されており、書面の審理だけでは不十分と判断。“法人”という無責任な集合体に責任を科すだけではなく、法人の顔=山本社長が出廷する異例の公開裁判となったのです。
それからというもの、電通に勤める知人たちも「残業できないからさっさと帰りま〜す」だの、「休日出勤できないので週明けに仕切り直しま〜す」だのと働き方を変えるそぶりを見せていたので、私は電通の変化を肌で感じていました。
ところが、です。
なんと、またもや電通が社員に違法残業をさせていたことが発覚。裁判で山本社長が頭を下げた翌年の2018年、営業関連の部署に所属する4人に36協定で決めた上限時間を超える残業をさせていました。最長は156時間54分で過労死ライン(月80時間)の2倍です。事前申請をせずに上限を延長した事例も6件あったといいます。
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