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「また違法残業」の電通 過労死のリアルを理解しないトップに問う“責任”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)

» 2019年12月13日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 まったくこの会社のトップは何を考えているんでしょうか。深々と高橋まつりさんの遺族に頭を下げたのは何だったのか? そもそも企業の責任をなんだと考えているんだ?

 まさか「50万払えばいいんだから」(17年の有罪判決時の罰金)と軽く見た? あるいは「見つかったら『労働環境改革に注力していきます』と言えばいい」と考えた? あれだけ日本中から注目された裁判だったのに。怒りしか湧いてきません。

残業規制に不満を言う人たち

 電通はこれまでも労基法違反を繰り返し、大切な命を奪ってきました。

  • 1991年、入社2年目の男性社員(当時24歳)が自宅で自殺。男性社員の1カ月あたりの残業時間は147時間を超え、上司からのパワハラもあり、遺族が会社に損害賠償請求を起こした。裁判は遺族に1億6800万円の賠償金を支払うことで結審
  • 2013年、当時30歳で病死した男性社員についても、長時間労働が原因の過労死として労災が認定された

 そして、15年の高橋まつりさん事件です。労働基準法が何のためにあるのか? 法律違反の責任は誰にあるのか? 分かっているのでしょうか。

 違法を繰り返すマインドの根っこには、人をコストとしてしか見ない非人格化思想がある。「別に死ななきゃいいだろ?」くらいにしか思っていない。そうとしか私には思えません。

 ただその一方で、残業規制が厳しくなったことに不満を言う人たちを、これまで何度も見てきました。

「夜中まで働きたい人もいるんだから、残業規制っておかしいよ」

「多様性っていいながら、国に残業時間を一律に決められるって納得できない」

「残業減らされると給料減る。やめてほしい」

 などなど。

 私はその度に「どんなにやる気があっても、仕事が好きでも、長時間労働をして睡眠時間が削られると、脳疾患や心疾患を引き起こす。『月80時間以上残業しています』と胸を張る人は、たまたま生き残っているだけ。いつ死んでもおかしくない。明日死ぬかもしれませんよ!」と脅してきました。

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