ただの田舎暮らしではない! 月4万円「全国住み放題」サービスが獲得したい“共感”とは乱立するサブスクビジネス 成否のカギを探る(1/5 ページ)

» 2019年12月25日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

乱立するサブスクビジネス 成否のカギを探る

音楽やデータ配信など、ユーザーにとって「お得」と感じられるようなサービスが多かったサブスクリプションサービスが、変容を始めている。単に「〜し放題」といったものから、リアル店舗との連携、ブランディングや、リピーター作りを狙うサービスも続々出ている。乱立するサブスクサービスで、生き残るカギはどこにあるのか。企業の取り組みに迫る。

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 減っていく人口と増え続ける空き家――。今、日本全国で深刻化している問題の解決を目指す仕組みとして、「ADDress(アドレス)」というサービスが注目を浴びている。月額4万円で「全国住み放題」という多拠点コリビングサービスだ。

 ADDressは2019年4月にテスト運用を開始。10月末には正式にサービスを開始し、新規会員の募集を始めた。ANAホールディングスなど、移動サービスの事業者とも連携し、今までにない形の定額制サービスを構築しようとしている。

 テクノロジーの発達によって、私たちの働き方や暮らしの捉え方は大きく変化している。仕事や移動の概念を変えるテクノロジーの活用が核となる、この定額制サービスで、どのように顧客との関係を築き、“共感”を得ようとしているのか。サービスを運営するアドレス(東京都千代田区)社長の佐別当隆志氏は「『都市にも暮らすし、地方にも暮らす』というライフスタイルを広めたい」と話す。

全国各地の“家”を利用できるサービス「ADDress」が提案するライフスタイルとは?

月4万円、全国約40カ所の“家”を共同利用

 まず、ADDressとはどのようなサービスなのか。

 ADDressには、19年末時点で全国28カ所の“家”が登録されている。20年初めには約40カ所になる予定だ。空き家や別荘などを借り上げ、リノベーションなどをして管理している物件だ。アドレスの所有物件もある。会員はそれらの家を共同利用できる。利用料金は月4万円(税別、年契約)。本人確認や反社チェックなどの審査も実施して、賃貸借契約を適用する。

【更新:2019年12月26日 物件数に関する表記を一部変更しました】

 会員になると、専用サイトで部屋の予約ができる。1回の予約につき、7日間まで連続滞在が可能。利用者の平均滞在期間は3日間で、週末などを利用した滞在が多いという。全国各地に共同利用できる“家”があるイメージだ。

ADDressで利用できる物件の一部

 この仕組みだけを見ると、「気軽に移住体験をしたい人のために建物を用意する」サービスのように見える。しかし、ADDressで取り込みたい“真のニーズ”はそこにはない。

 キーワードは「コミュニティー」だ。

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