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HR市場は2023年に2504億円へ拡大 ただし個人情報に関する問題も浮き彫りに

» 2019年12月27日 16時30分 公開
[ITmedia]

 jinjer HR Tech総研は、HRに関する2019年の振り返りおよび20年の展望に関するレポートを発表した。

 19年は4月に「働き方改革関連法」が施行されるなど、HR業界は大きく動いた年となった。HR市場は19年についに1000億円を超え、前年比130%の約1199億円と大幅に増加した(シード・プランニング調査)。23年には2504億円まで拡大すると予測されており、HR Tech市場はますます成長することが見込まれる。

 19年は、働き方の変化に伴ったサービスの登場や、働き方改革関連法に対応したサービスのアップデートおよびリリースが相次いだ年となった。特に、ギグワーカーや副業といった単発で好きなときに働けるサービスと、エンジニアの採用難を解決するためのダイレクトリクルーティングサービスの登場が目立った。アメリカの成人のうち、約29%はギグワーカーとして従事しており、日本でも今後ギグワーカーおよびそれに付随するサービスの増加が推測される。

 また、ベンチャーキャピタル投資額は約305.8億円となり、前年に比べて大型資金の調達は減ったものの、金額非公開案件を含めると件数は104件(前年比:226%)と倍増した。この動きは世界でも同様で、19年のベンチャーキャピタル投資額は史上最高額を更新するといわれている。20年も日本だけでなく、世界においてもHR Techはベンチャーキャピタルに注目されるだろう。

 19年は例年以上にAPI連携のニュースも活発となり、最低でも約50件以上のAPI連携のニュースが発信された1年となった。今まではマルチプラットフォーム状態により、人事は入社や異動の際のオペレーションが非常に煩雑だった。そんななか、API連携の出現により、一部の従業員情報がシステム間で連携されるようになっている。しかし、全ての情報が連携されないケースも多く、マルチプラットフォームからシングルプラットフォームへの動きは20年以降も活発になると見込まれる。今後はさらなる人事領域の業務効率化が期待できる。

 一方、19年はリクナビの内定辞退率予測サービス問題など、個人情報の扱いに関する問題も浮き彫りになった。HR Techサービスの利用者と提供者がともに正しい認識を持つために、「法目的や個人情報等の活用が明確に定義されたガイドライン」が必要となる。20年は個人情報改正に伴う個人情報の再定義とともに、「個人情報に対する相互理解」が問われる1年になるだろう。

 人材の定着化や生産性向上が求められている昨今においては、従業員体験の向上も求められている。従業員体験とは「従業員が働くことを通じて得られる体験」の意味。採用から退職までのライフサイクルにおけるさまざまなタッチポイントで、従業員にパーソナライズされた体験を提供することが重要になる。また、従業員体験をよくすることで優秀な人材を引き付け、定着につながるといわれている。

従業員が働くことを通じて得られる体験(従業員体験)が重要になる

 アメリカでは、従業員体験を向上させるために「給与連動ローンなどの金銭的利益を提供する企業」が存在する。日本でも従業員体験向上の1つの解決策として、人材の定着率アップを目的とした「給与前払いサービス」の導入が浸透し始めている。20年は、福利厚生の充実を目的とした「HR × Fintech」や「HR × Insur Tech」のサービスが増えてくると推測される。

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