強い組織を作る人事の技
インタビュー
» 2019年12月06日 07時00分 公開

1万7000人の新卒が殺到する中小企業社長が語る、優秀な人材の集め方 (1/3)

社員20人の新興企業ながら、新卒採用に学生が殺到することで注目を集めるLegaseedの近藤代表に、人材採用のヒントや日本企業の課題を聞いた。

[らいら,ITmedia]

 現在の就活は空前の売り手市場だ。リクルートワークス研究所の調査によると、2020年3月卒業予定の大学生・大学院生に対する求人倍率は1.83倍、中小企業に限れば8.62倍と高水準となっている。求人に対して36.5万人の人材不足状態だ(引用:第36回ワークス大卒求人倍率調査 2020年卒/リクルートワークス研究所)。

 人材の採用に苦戦する中小企業が多いなか、人材採用コンサルティング企業のレガシード(Legaseed)は「社員20人でありながら新卒採用に1万人の学生が殺到する企業」として注目を集めている。2020年卒からは1万7000人以上のエントリーがあり、12人の内定が出ているという(途中経過)。

 レガシードはなぜ、それほど多くの人材を集められるのか。代表取締役の近藤悦康氏に、突出した実績を残すための戦略や、日本における新卒採用の課題を聞いた。

Legaseed代表取締役の近藤悦康氏

新卒採用は会社の5年先をイメージするところから

―― レガシードは創業6年でありながら、毎年多くの学生がエントリーする人気企業となっていますが、具体的にはどのような事業をしているのでしょうか。

近藤 やろうとしていることは「世界を変える事業」です。以前、学生から「日本の学校教育を良くするとしたら、近藤さんは何をしますか?」と聞かれて、「僕だったら教師の採用試験を根本的に変える」と答えました。

 私たちがやっている新卒採用という領域は、最終的には学生を取り囲む学校教育や、社会を変えていく非常にインパクトのあるプロジェクトだと思っています。人事に関するコンサルティングでさまざまな事業をこの20年間やってきましたが、イノベーティブかつスピーディーにその会社の理想を作るには、最初に新卒採用にメスをいれるのが最も早かったのです。特に中小企業はそうです。

 このため、一言で私たちの事業を説明すると、新卒採用を切り口に組織の変革、理想の組織づくりに貢献する支援をしている、ということになります。

―― 新卒採用のコンサルティングは、採用の先にある会社の変革、さらにその先にある社会を変えていくためのツールということですね。

近藤 なぜ新卒採用が会社を大きく変えるかというと、新卒採用の場合は中途採用と異なり、会社として育てる仕組みを作る必要があるからです。育成環境やルール、マニュアル、仕組みづくりなど、若い社員のパフォーマンスが上がるような組織体制を作っていくために、会社が変わらなければいけません。

 また、特に売り手市場で新卒採用を成功させるには、社長や総務の採用担当が1人で頑張っても厳しいのです。大事なのは、人を採用するのがゴールではなく、採った人材が入社後に活躍して会社に居続けてもらうこと。そのためには、現場のトップがきちんと選考から関わり、この人材を責任を持って育てるという覚悟を持つ必要があります。

―― 新卒採用には現場の人間も関わることが重要なのですか?

近藤 同じ事業部の入社5〜10年目くらいで、会社のリーダークラスの社員たちも新卒採用プロジェクトに入れる必要があります。社長、採用担当、各部門の責任者、リーダー、新人内定者。事業部や世代を超えて会社のキーマンが集うプロジェクトが新卒採用です。

 内定者がある程度一人前になるには約5年かかるので、5年先の会社の姿から逆算して、今からどういう人材を採用して、どんな環境で育てていくかを考えなければいけません。会社の中心人物が集まって会社の5年先をイメージし、採るべき人材を設定し、会社の魅力をどう伝えていくのか、もしくは魅力がなければどうやって作っていくのかを議論しながら組織づくりを進めることが大きな価値になります。

―― 新卒採用活動は会社のビジョンの設定やブランディングのきっかけでもあるのですね。しかし、会社の中心メンバーとなるのはたいてい多忙な社員たちですよね。「今の業務で忙殺されているのにさらに新卒採用までやるの?」と抵抗されませんか?

近藤 だからこそ「今の忙しさをこれからも続けたいですか?」という話です。5年10年先の自分の理想の状態を作ろうと思ったら、緊急ではないけれど重要なことを進める必要があります。しかし、1人でやるのは難しいので、チームを組むことが大切です。会社のなかで暇な人がやってもいい人材は採れません。忙しい人材は魅力的であり、周囲から期待される人。そういう人々が一緒になってやるべきです。

 しかし、最初の意識付けが大事なのであって、実際の選考活動がスタートしたら、それほど現場に負荷をかけてはいけません。例えば、新人は合同説明会のブースの運営を手伝う、ある子は説明会の座談会、ある部長は面接を5人だけ担当する、というように役割分断する必要があります。

選ばれた理由が「休みが多くて残業が少ない会社」でいいのか

―― 就職活動をする学生は働くことに対してどのような意識を持っていて、どのような仕事に魅力を感じるのでしょうか。

近藤 「2020年卒マイナビ大学生就職意識調査」では、学生が会社を選ぶポイントに「安定している」「自分のやりたい仕事ができる」「給料がいい」などが挙がっています。ただ、これらに振り回される必要はないとも思います。

 例えば、「休みが多くて残業が少ない会社」が人気だとすると、休日が少なくて残業が多いと打ち出すと、中小企業であればなおさらそっぽ向かれるのでは、と一見思いますよね。でも、自分の会社が仮に休みが多くて残業が少ない会社だとして、学生から自分の会社を選んだ理由にそれを言われたいですか? 事実だとしても、休みや残業の有無で決めてほしいでしょうか。

「自分たちの会社は何を理由に(学生に)選んでほしいのかを考えるべき」と語る近藤氏

―― 「イケメンで年収が高いから結婚しました」と言われるようなものですね(笑)。

近藤 「自分たちの会社は何を理由に選んでほしいのか」を研ぎ澄ませて考えなければいけません。当社の3年目のある社員は、6社から内定が出て最後に当社に入ると決めたんです。その理由を聞いたら「一番困難だと思ったから」でした。大手企業に入って「すごい」と言われるより、10年後のレガシードを作って「すごい」と言われる人生の方がワクワクしたそうです。

 中途半端に「他社より休みが多いよ」「残業を是正しているから働きやすいよ」などと言ってはいけません。そこを分かっていないから「もっと休みを多くしたり、初任給を上げたりしたほうがいいのかな」なんて考えてしまうのです。問題の本質はそこではありません。

―― コンサル事業で成功した具体的な事例を教えてください。

近藤 岡山県の和気郡に4店舗ほどあるガソリンスタンドです。それまで顧客は高卒とハローワークでしか採用したことがなく、大卒採用の経験がない、非常に難易度が高い条件でした。

 最初は社員教育から始めました。月に1度私が行って、その会社の理念やビジョンを深く認識したり、どのような会社を作っていけたら理想なのかを自分たちで構築していくワークショップを実施しました。「会社は自分たちで作るものなんだ」と当事者意識を上げていく作業は最初は1年かけてやる予定でしたが、半年ほどで調整できたので、新卒採用をスタートさせました。

 その結果、就職説明会には60〜100人ほどが来て、その中から岡山の国立大生2人と理科大生2人の4人を採用できました。その学生たちはガソリンスタンドに入社したわけではありません。ガソリンスタンドとは別の、その会社が未来に構想している事業を自分たちの手で実現したいと考えたのです。そのために、事業の根幹である店舗運営に学生のアルバイトとして1年、さらに入社後1年取り組み、そこから新規で飲食事業をスタートさせました。

 和気郡には週末に家族で行けるような大きな飲食店がなかったこともあって、新卒4人でアルバイトを採用したり育成したり、メニューを作ったりと、店舗運営で学んだスキルを生かして今はすごい繁盛店を作っているようです。

―― 未来の事業のための人材を採用した好例ですね。

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