動き出した1400キロのサイクリングロード 千葉から和歌山まで、壮大な計画の狙い地域ビジネス、ここがカギ(1/4 ページ)

» 2020年01月10日 07時00分 公開
[甲斐誠ITmedia]

地域ビジネス、ここがカギ

地域経済の活性化を目指して、各地域固有の強みを生かす取り組みが進んでいる。しかし、企業や個人の努力だけが成否を分ける要因ではない。人口減少が進む中で、制度化や連携は欠かせない。地域活性化の成否を左右するキーワードに迫る。


 千葉県銚子市から太平洋岸約1400キロを駆け抜け、和歌山市に至るサイクリングロード。1960年代後半に構想が浮上し、70年代には工事が始まったが、約半世紀を経ていまだ7割余しか出来上がっていない。この未完の太平洋岸自転車道の整備を急ぐ機運が、政府や沿線自治体を巻き込んで突如盛り上がっている。

 その背景には、2020年東京五輪・パラリンピックを機に、海外からのサイクリストを呼び込む狙いがある。これまで未決定だったスタート・ゴール地点も19年末に固まり、沿線で地域振興に携わる関係者の期待も高まっている。

全長約1400キロ、未完のサイクリングロードの整備計画が動き出した

1973年の国会答弁で構想表明

 「昭和48(1973)年度から、鹿島から房総半島を一周し、伊豆半島を通り、そのまま紀伊半島まで行く大規模な自転車道をやれる(整備できる)よう措置したい」。73年2月23日、衆院交通安全対策特別委員会で答弁に立った建設省(現・国土交通省)道路局の菊池三男局長はこう明言した。太平洋岸自転車道の設置が力強く動き出した瞬間だった。自転車道路協会が数年前から長距離自転車専用道の整備を求めていたことも後押しとなっていた。局長の言葉通り、同年4月以降、千葉県などで建設工事が順次始まった。

 だが、約半世紀が経過した今も未完のままだ。理由は簡単。自転車道よりも自動車道の建設を優先してきたためだ。財源不足で自転車専用道の敷設は遅れ、案内板や標識の設置も少ない。壮大な構想も日の目を見ることなく、ぶつ切り状態のまま人々の記憶から忘れ去られようとしていた。

 しかし、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」の成功でサイクリングロードが観光振興にも高い効果があると一般に知れ渡り、風向きが変わった。各地の空港や駅でもサイクリストを意識した駐輪場など関連施設が徐々に整ってきた。

 政府も2017年5月に自転車活用推進本部を設置し、サイクリング環境の整備に向けた取り組みを本格化させた。さらに、東京五輪・パラリンピックで来日する外国人観光客のさらなる誘致につなげようと、国交省や近畿地方整備局などが太平洋岸自転車道の沿線自治体と協力し、整備を加速する方針で一致。当面は利用者が道に迷わないよう、矢印形の路面標示や標識の整備を進める方針だ。

 ルートの詳細や整備時期などを示したWebサイトも既に公開され、準備は着々と進んでいる。分岐点で迷わないよう、路面標示や案内板を20年3月末までに約400カ所新設する予定で、自動車との接触などの危険性が高い場所では注意を呼び掛ける看板も設置する。沿線の鉄道駅には、レンタサイクルや着替え場所を設けることも検討している。

太平洋岸自転車道Webサイトのトップページ(出典:太平洋岸自転車道
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