優秀なベンチャー企業育成に成功するイスラエル 政府が果たした役割とは?イスラエルに学ぶビジネス(2/5 ページ)

» 2020年01月17日 13時20分 公開
[新井均ITmedia]

スタートアップが国の経済成長を支えるイスラエル

 遅ればせながら日本の産業育成も、大型の官製プロジェクトではなく、国や地方自治体が起業家や挑戦者を支援するような枠組みに変わってきた。しかし、まだまだイスラエルのようにスタートアップが国の経済成長を支えるまでには至っていない。

 イスラエルでは、年間1000社を超えるスタートアップが生まれ、18年の実績では623件のディールで64億ドルの資金を調達している。その80%は米国を中心とする海外からの投資である。スタートアップが次々に魅力のある技術、イノベーションを生み出すので、海外からの投資が集まるのである。

ICT買収事例(出典:イスラエル外務省、メディア・広報局)
日付 企業名 買収者 買収額(100万ドル)
2011年2月 アンサーズ(Answers) AFCV 127
2011年6月 メディアマインド(MediaMind) DG 517
2011年8月 ドトミ(Dotomi) バリュークリック(ValueClick) 295
2011年8月 プリムス(Plimus) グレートヒル(Great Hill) 115
2011年9月 テルマップ(Telmap) インテル(Intel) 300
2012年3月 アモビー(Amobee) シングテル(Singtel) 321
2013年6月 ウエイズ(Waze) グーグル(Google) 996
2013年10月 オナボ(Onavo) フェイスブック(Facebook) 150
2014年2月 バイバー(Viber) 楽天(Rakuten) 900
2014年6月 コンテラ(Kontera) シングテル(Singtel) 150
2014年6月 ドラゴンプレイ(DragonPlay) ボール(Ball) 100
2017年3月 モービルアイ(MobileEye) インテル(Intel) 15300

 天然資源に恵まれないイスラエルでは、人材は資源であり、優秀な人材が生み出すイノベーションが国の経済発展の原動力となった。このようなイノベーションを次々に生み出す優れたエコシステムは世界から注目されている。

イスラエルスタートアップのエコシステムビルダー

 イノベーションを次々に生み出す優れたエコシステムは、図のように6つの要素が密接に連携して機能しており、世界から注目されている。この中でも、イスラエルが国として行ってきた(心がけてきた)ことは、主に3つあると筆者は考えている。

 それは、(1)起業家への投資を行いやすくする環境をつくる、(2)挑戦者を邪魔しないための規制緩和とインセンティブを用意する、(3)国は中身には口を出さない、である。

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