同じことは、接客業のみならず、企業間の取引についても当てはまる。エン・ジャパンが調査した「中小企業の残業実態」によると、「残業が発生している主な理由」のトップは「取引先からの要望(納期など)にこたえるため」(51%)であった。取引先に残業を強いる。まさにこれも「ブラック乞客」による被害であろう。
筆者は働き方改革推進による労働環境改善サポートが本業であるが、各地で経営者の皆さまに「日本はもう10年以上前から人口が減少しており、これから若い働き手はますます不足します」「そんな中、『何事も残業でカバーする』というやり方では取り残されますよ」と警鐘を鳴らし続けている。もちろん多くの方は危機感を抱いて行動を起こしていただけるが、中には次のように反論されるケースもある。
「それは分かるけど、実際残業をなくすなんてとてもできないよ! ウチはお客さんからの急な依頼にもすぐ対応することで選ばれているんだから!」
お気持ちはよく分かる。実際、私自身もブラック企業勤務時代はまさにそのようにして仕事をとってきていたからだ。しかし結果的に疲弊してしまった経験があるからこそ、今は嫌われ役を覚悟してこのようにお返ししている。
「それは『選ばれている』のではなく、『あの会社なら多少理不尽な要求でもやらせられるだろう』となめられてるんですよ。御社がやるべきなのは『残業でカバーする』ことじゃありません。『ブラック乞客を切る』ことと、『品質で選ばれる』ことです」
ブラック乞客の理不尽な要求を受け入れてしまうと、今度はそれに間に合わせるために自社の従業員に理不尽な長時間労働を強いることになってしまう。すなわち、理不尽が乞客から自社へ伝染してしまうのだ。
課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
ブラック企業大賞を2年連続で受賞した三菱電機 過労死を繰り返す「隠蔽」の構図を探る
それでも“インフルエンザ出社”がなくならないワケ くだらない「武勇伝」づくりはもうやめよう
いきなり!ステーキ大量閉店の裏で着々と牙を研ぐ「やっぱりステーキ」の不気味な存在
“昭和”な働き方「病気でも休まないことが美徳」 令和になってもまだまだ続く?
2019年の「人手不足倒産」、過去最多 過去7年で最も倒産が多かった業種は?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング