スマホの広告などでよく見かける「80%充電まで◯分」という表記には、実は深い意味がある。バッテリーというのは、最初から最後まで同じペースでは充電できない。完全にゼロから10%くらいまでの充電はものすごく時間がかかるし、80%からの残りの20%も同様に時間がかかる。急速充電できるのは、多目に見積もっても間の70%くらいなのだ。その枠を外れると、通常充電になり時間をものすごく食う。
なので、前編で提案したガイドラインを実現するには、この急速充電枠を、どうやって10分で充電できるようにするかだ。
ホンダが東京モーターショーに出品した2輪と4輪のEV
問題は発熱の処理にある。急速充電の大敵は熱で、発熱を放置するとバッテリーが壊れてしまう。だから冷却が必要だ。テスラはバッテリーを水冷にして冷却を行っている。日本のメーカーに足りないのは、この急速充電時の冷却への対応だ。
クルマが止まっている状態で冷却しなくてはならないので、ファンを使った強制空冷だけでは難しい。なぜ水冷にしないのかトヨタの幹部に聞いたところ、電池の回りに水を使いたくないとのことだ。安全を特に重視する日本のメーカーらしいともいえるが、冷却ができなければ急速充電の速度で負ける。発熱しない範囲でしか充電できないからだ。充電速度を落とすことで温度管理を行っていたのでは勝てるわけがない。
現行型プリウスPHVの走行用バッテリー。バッテリーの冷却は導風による強制冷却。EV用にはさらなる冷却能力が求められる
しかし水を使わなくても冷却する方法はいくらでもある。例えばヒートポンプを使えばいい。平たく言えばエアコンだ。新たに搭載しなくても元々クルマに付いている。
熱伝導の高い金属板でバッテリーを囲い、その金属板にパイプを回して、冷却を行う。パイプの中には冷媒が通っており、フロントグリル内に置かれたコンデンサーで放熱する。こうした冷媒を用いる方式だと外気温との温度差が作りやすいので、気温の高い環境でも、冷却水型よりも効率良く冷やせるし、レスポンスが良い分、温度管理が緻密にできるはずだ。
実は緻密な温度管理というのは重要で、バッテリーの性能は温度依存性が高い。使用時も含めて、常時適温に制御しておけば、より高い能力を発揮できる。例えばテスラの場合、ナビの目的地に充電ポイントを指定した場合、充電開始時間を見越してあらかじめバッテリーを加温して、すぐに高速充電できるように環境を整えている。
日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
マツダのEVは何が新しいのか?(前編)
東京モーターショーの見どころの1つは、マツダ初のEVであるMX-30だ。クルマの生産から廃棄までの全過程を通して見たときのCO2負荷を精査した結果、35.5kWhというどこよりも小さいバッテリーを搭載した。世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30だ。
EVにマツダが後発で打って出る勝算
マツダが打ち出したEVの考え方は、コンポーネンツを組み替えることによって、ひとつのシステムから、EV、PHV(プラグインハイブリッド)、レンジエクステンダーEV、シリーズ型ハイブリッドなどに発展できるものだ。そして試乗したプロトタイプは、「EVである」ことを特徴とするのではなく、マツダらしさを盛ったスーパーハンドリングEVだった。
バッテリースワップ式EVへの期待と現実
時期はともかく、EVは必ず普及する。ただしそのためにクリアしなくてはいけないのがバッテリーの問題だ。EVの性能を決める心臓部品でもあるバッテリーは、高価な部品である。ではどうやって安いバッテリーで充電の待ち時間を短縮するか? という話になると人気の説の一つが、バッテリースワップ方式。ここに可能性はあるのだろうか?
トヨタとマツダとデンソーのEV計画とは何か?
かねてウワサのあったトヨタの電気自動車(EV)開発の新体制が発表された。トヨタはこれまで数多くの提携を発表し、新たなアライアンスを構築してきた。それらの中で常に入っていた文言が「環境技術」と「先進安全技術」である。
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