クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年01月21日 07時20分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:日本のEVの未来を考える(後編) (1/5)

EVの普及を突き詰めると、充電時間が一番の問題で、バッテリーの詳細な充電規格を電力会社と自動車メーカーの間で策定しなくてはならない。これは充電状況とクルマ側の状態を相互通信しながら行うので当然のことだし、全ての自動車メーカーがその規格を利用できるオープン規格でなくてはならない。

[池田直渡,ITmedia]

 スマホの広告などでよく見かける「80%充電まで◯分」という表記には、実は深い意味がある。バッテリーというのは、最初から最後まで同じペースでは充電できない。完全にゼロから10%くらいまでの充電はものすごく時間がかかるし、80%からの残りの20%も同様に時間がかかる。急速充電できるのは、多目に見積もっても間の70%くらいなのだ。その枠を外れると、通常充電になり時間をものすごく食う。

 なので、前編で提案したガイドラインを実現するには、この急速充電枠を、どうやって10分で充電できるようにするかだ。

ホンダが東京モーターショーに出品した2輪と4輪のEV

バッテリーの発熱との戦い

 問題は発熱の処理にある。急速充電の大敵は熱で、発熱を放置するとバッテリーが壊れてしまう。だから冷却が必要だ。テスラはバッテリーを水冷にして冷却を行っている。日本のメーカーに足りないのは、この急速充電時の冷却への対応だ。

 クルマが止まっている状態で冷却しなくてはならないので、ファンを使った強制空冷だけでは難しい。なぜ水冷にしないのかトヨタの幹部に聞いたところ、電池の回りに水を使いたくないとのことだ。安全を特に重視する日本のメーカーらしいともいえるが、冷却ができなければ急速充電の速度で負ける。発熱しない範囲でしか充電できないからだ。充電速度を落とすことで温度管理を行っていたのでは勝てるわけがない。

現行型プリウスPHVの走行用バッテリー。バッテリーの冷却は導風による強制冷却。EV用にはさらなる冷却能力が求められる

 しかし水を使わなくても冷却する方法はいくらでもある。例えばヒートポンプを使えばいい。平たく言えばエアコンだ。新たに搭載しなくても元々クルマに付いている。

 熱伝導の高い金属板でバッテリーを囲い、その金属板にパイプを回して、冷却を行う。パイプの中には冷媒が通っており、フロントグリル内に置かれたコンデンサーで放熱する。こうした冷媒を用いる方式だと外気温との温度差が作りやすいので、気温の高い環境でも、冷却水型よりも効率良く冷やせるし、レスポンスが良い分、温度管理が緻密にできるはずだ。

 実は緻密な温度管理というのは重要で、バッテリーの性能は温度依存性が高い。使用時も含めて、常時適温に制御しておけば、より高い能力を発揮できる。例えばテスラの場合、ナビの目的地に充電ポイントを指定した場合、充電開始時間を見越してあらかじめバッテリーを加温して、すぐに高速充電できるように環境を整えている。

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