クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日本のEVの未来を考える(後編) 池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2020年01月21日 07時20分 公開
[池田直渡ITmedia]
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残された課題

 さて改めて振り返れば、このプランで重要なポイントは、「車両価格300万円、航続距離250キロ、充電時間10分」が実現可能かどうかだ。

 車両価格は現在350〜400万円までは下がってきている。あと15%頑張れば何とかなる。航続距離は35kWh級のバッテリーで現状約200キロだから、こちらもあと15%くらい。このあたりはバッテリーのどこまでを使うものとして航続距離が発表されているかにもよる。本当に100%使い切って200キロだと、15%アップでは済まない。

 充電時間が一番の問題で、バッテリーの詳細な充電規格を電力会社と自動車メーカーの間で策定しなくてはならない。これは充電状況とクルマ側の状態を相互通信しながら行うので当然のことだし、全ての自動車メーカーがその規格を利用できるオープン規格でなくてはならない。

 さて、そんなことが可能なのだろうか? この問題は引き続き取材を行っていきたい。筆者が勝手に取材対象だと考えているのは、EV C.A.Spiritと、e-Mobility Powerの2社だ。

 EV.CASはトヨタ、マツダ、デンソーが出資するEVの標準規格策定を目的とする会社で、スバル、スズキ、ダイハツ、日野、いすゞ、ヤマハも参加している。彼らの考えるEVの標準規格は今回筆者が書いた絵図とどのくらい違うのかを確認したい。e-Mobility Powerは、東京電力ホールディングス傘下の電動車充電サービスを担う会社だ。彼らの事業プランと、筆者の考え方も比べてみたい。

 この2社が協力体制を取れれば、かなり状況は改善するのではないかと思っている。ということでこの記事は読者向けであると共に、2社に向けたプレゼンでもある。この記事を読んで「そんなこともうやってます」なのか、「なるほど面白い」なのか、「何をとんちんかんな」なのか、場合によっては「それ先方と話し合いたいから仲介してくれませんか?」なのかは分からない。

 いや、そもそも、全く違う会社から反応があるならそれも良しである。この件について面白い話をしてくれる会社なら筆者は取材に行くつもりだ。

 本当に頑張っている人たちを知りもせずに「化石賞」を贈った国連の連中もぶっ飛ばしてやりたいし、それを皮肉にはやし立てることしかしなかった日本の大手メディアも不愉快なのだ。現場で頑張っている名も無い多くの日本人の反論をくみ上げる仕事を、筆者はやりたいのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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