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10年後「自家用車激減」の衝撃――オワコンになる意外な業界とは?“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2020年01月24日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

「物件に駐車場不要」の時代に

 近年、クルマを手放す人が増えていることから、郊外における一戸建住宅の販売が不振となっており、駅に近い利便性の高いマンションに人気が集中している。現状ですら、これだけの影響があることを考えると、カーシェアと自動運転が本格化した時の影響は極めて大きい。

photo 自家用車減少の一因とされるカーシェア(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 これからのマンション開発は、カーシェアの利用を大前提にする必要が出てくるほか、運送事業者のトラックも自動運転になることを想定しておく必要がある。駐車場の有無や台数は重要なファクターでは無くなり、自動運転車両の取り回しが容易なエントランスを備えていることが資産価値のカギを握るだろう。

 一戸建ての住宅についても、クルマを保有しない世帯が増えてくるので、駐車スペースをどう位置付けるのかデベロッパーは悩むことになる。経済の貧困化が進む日本の現状を考えると、駐車場が要らなくなる分だけ、さらに敷地面積を減らし、安価な住宅にするという流れが加速するかもしれない。

損保業界に大打撃

 金融業界では損害保険業界が大打撃となる可能性が高い。自動運転の場合、最終的に誰が事故の責任を負うのかについては100%法的に固まっているわけではないが、仮に自動運転車の所有者が責任を負う場合でも、事故の発生確率は今と比較して大幅に下がるはずなので、保険料は引き下げざるを得ない。

 損害保険業界は、個人が加入する自動車保険で成り立っている。19年、損保大手の損保ジャパン日本興亜が、20年度までに国内損保事業の従業員数を4000人減らす方針を示した。介護サービスを手掛ける関連会社への転籍もあり得るという一部報道もあり業界には激震が走ったが、この事例は損保会社が置かれている現状がいかに厳しいのかを物語っている。

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