がんになった人の保険金を加入者が分担 P2P保険の「わりかん保険」が開始(2/3 ページ)

» 2020年01月28日 17時43分 公開
[斎藤健二ITmedia]

保険では日本初の「内閣府サンドボックス制度」案件

 ユーザーにとってメリットが多いように見えるわりかん保険だが、継続的にサービスを提供できるかには確認すべき点が多い。

 この仕組では、誰かががんにならなければ保険料は発生せず、保険会社への管理費も発生しない。保険事業として成り立つためには、統計的にがんになる人が発生する程度の加入者が必要だ。「加入者が数千件だと、がんになる人が出てこない。最低でも1万人に早急に達したい。加入者が3000人くらいいけば、求められる商品だといえるのではないか」(畑氏)

従来の保険とP2P保険の大きな違い

 また不正請求の防止も課題だ。通常の保険では、誰かががんにかかると保険料を支払わなければいけないため、保険会社は厳しく審査する。しかし、保険金をあとから加入者が支払うわりかん保険の仕組みでは、保険料上限までは保険請求が増えたほうが、保険会社の利益にもつながってしまう。畑氏は、通常の保険と同じように、保険業法の定めに従って厳正に審査していくと話すが、ビジネスモデルとしては一定の利益相反が発生してしまう。

 がん保険からスタートしたのも、不正請求をにらんでだ。「モノを壊すことや死ぬことは自分の意志でもできるが、自らの意思でがんになるのはハードルが高い」と、畑氏はこのジャンルから始めた理由を説明した。

 こうした点から、わりかん保険では革新的なビジネスアイデアの実証実験に使われる「内閣府サンドボックス制度」のもとで提供される。金融分野では2件目、保険では日本初だという。2月1日から1年間、サンドボックス制度内で実証実験として運用され、問題がなければ継続するという形だ。既存の契約者はそのまま継続できるという。

透明性を重視するのも特徴。誰かががんになったら、年齢や性別など個人情報に当たらない範囲で情報を開示し、その人への保険金を分担して支払うということが分かるようにしていく

中国で普及進む、P2P型保険

 保険料を加入者がリスクをとって分担するP2P型の保険は、中国で先行しているサービスだ。中国のアリペイ子会社が提供する同種の保険は、加入者が1億人を突破。芝麻信用のスコアを組み合わせるほか、加入者が査定も行うなど、進んだ仕組みだ。ドイツや米国でも似た仕組みのP2P型保険があり、急速に加入者を増やしている。

 「わりかん保険では、全ユーザーと保険会社で助け合いをする形。保険会社1社ですべてのリスクを取るわけではないので、いままで作れなかったような商品が提供できる」と畑氏は意気込む。当初はがん保険だが、今後、生保や損保については協業によって広めていきたいとした。

すべてのリスクを保険会社が負わない仕組みのため、これまで難しかった高リスクな保険商品も開発が可能になる

 わりかん保険自体は、8社と販売パートナーとして提携し、オンラインでの送客のほか子会社などを通じて対面営業でも提案に含めていく。P2P保険という新たな仕組みが、海外のように根付くかどうかに注目したい。

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