将来を完全に予想できる人がいないことを前提に、投資家はさまざまな証券に投資することが望ましい。仮にすべてを予想できるのであれば、もっとも良い(値上がりする)証券をひとつだけ買えばよい。しかし、実際には不可能なので、投資家は「ポートフォリオ」を作ることになる。そこで、資産を株式や債券など種類別に分散して運用するバランス型投資に注目する。
2020年の世界経済は、この数年の中では低成長になるとみているが、安定成長は続くだろう。ただし、市場はさまざまな事件の発生や経済指標の揺らぎに動揺しやすい。米中貿易摩擦や米イラン関係を含む地政学リスクや米国大統領選挙が市場の心理に影響を与え、証券価格の振れはある程度大きいと予想する。低成長であれば、一時的な振れ幅が市場心理に与える影響が相対的に大きくなりやすいからだ。
そこで、投資家は自らが許容できるリスクの程度に見合ったポートフォリオを考え、バランスの良いアロケーションを考える必要がある。株式だけではボラティリティの心理的圧迫に負けやすくなるし、債券だけでは物価に応じた価値保全は目指せたとしても、経済成長の果実を受け取れるとは限らない。投資家は、自らが許容できる振れ幅を判断し、適切なアロケーションを考える必要がある。これに2020年は適切な年になりそうだ。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2014年に公的年金の運用収益の向上に向けて、内外株式の構成割合を引き上げた基本ポートフォリオを発表した(現在改定中とされる)。当時、年金運用ではこのポートフォリオが長期的に良いとみなされた。これは基本方針なので毎年変えるものではなく、許容幅の中で調整される。
GPIFの基本ポートフォリオはわかりやすい。債券と株式は5対5(半分ずつ)で、国内と外国資産で6対4となっている。このようにして、債券投資で元本の保全を狙いつつ、株式投資で世界の成長を享受しようとする。外国債券の保有は、為替リスクを伴うが、高金利通貨であれば長期保有で円債投資よりもリターンが高くなる傾向にあり、無視できない投資対象だ。
投資の目的が“引退後の潤いのある生活”だと考え、資産形成世代がポートフォリオを作る場合、「どれが一番儲かるか」ではなく、(それがわからない前提なので)まずは元本保全と成長期待を半々にするなど、個々人で考えることが必要だ。市場の変動が大きい場合、どれが一番良いのか、というよりも、どれが一番悪くないかを考えたくなるが、このような経済・相場状況では、バランス型投資をコア部分とする意味を明確に意識するチャンスといえる。
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