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ナイキやディズニーを経てギター最大手のCEOへ プロ経営者が見た音楽市場の“特異性”(2/5 ページ)

» 2020年02月04日 07時21分 公開
[戸津弘貴ITmedia]

再び音楽を

――過去に音楽をやっていた人で、進学や就職で音楽から遠ざかっていた人が一定数います。ところがAppleがiPodを出したことをきっかけに、音楽をもう一度やりたいと思い再び演奏をするようになった人、子育てが落ち着いたので何か楽器を始めた、という人が多いです。こういう人々へのメッセージはありますか?

ムーニー氏 まさに、重要なポイントなんですが、我々のリサーチでは、あなたが経験した2つの事例が明らかになっています。

 まず、熱心にギターを演奏していた人でも、仕事や結婚などをきっかけにやめてしまうというデータがあります。子供ができると更にその数は増えます。そして子供が親元を離れる時にやっと自分の時間もできてきて、楽器にも再チャレンジできるようになるというものです。

 我々の「Fender Play」というデジタル学習アプリの利用者の統計を取った際、利用者の半数は若い世代で、初めてギターを弾く若い人だと想定していました。しかし、実際には半数が再びギターを手にする中高年の利用者だったんです。

 もう1つは、音楽のデジタル化です。初代のiPodは確か5000曲ぐらいの容量だったと思います。それが去年の段階で、2億5500万人以上の人々がストリーミング音楽サービスに加入しており、例えばApple Musicには今や5000万曲があります。新旧たくさんの曲に接することで、過去の曲でもいい曲は若い世代の人にも聴かれるという現象が起こっています。

 そこで我々は、2つ目のデジタルサブスクリプション製品となる「Fender Songs」というアプリをローンチします(現時点、北米のみ展開)。ギターを弾く人達の為の(音楽を聞き取って曲名を表示してくれる)「Shazam」みたいなアプリです。Apple Musicの曲であればコードと歌詞が自動生成されます。

 そのサービスはローンチの頃にはAppleMusicにある約100万程の曲にアクセスできるようになります。iPodの登場の時に、数百万もの曲の歌詞とコードが付いてきたと想像してみてください。そこにたくさんの音楽がある、新譜にもオールディズにも簡単にアクセスできるということをね。

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