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ナイキやディズニーを経てギター最大手のCEOへ プロ経営者が見た音楽市場の“特異性”(4/5 ページ)

» 2020年02月04日 07時21分 公開
[戸津弘貴ITmedia]

デジタル時代におけるフェンダーの新しい取り組み

――最近では、ヘッドホンやBluetoothスピーカーなども増えてきていますが、こちらのジャンルの商品も主力アイテムとして考えているのでしょうか? ギターやアンプも含めたフェンダーのこれからについて教えてください。

ムーニー氏 まず、このカテゴリーの商品は競争が激しく、価格競争や値下げ圧力にさらされています。どのセグメントに参入するか、販売チャネルや価格などを注意深く見極める必要があると考えています。

 フェンダーの強みは、エレキギターとアンプのシェアが大体市場の40%ほどなのに対して、プロアーティストにおけるシェアは80〜90%だということです。(過去勤めていた)ナイキでの経験によると、市場シェアとアスリートの商品使用には強い関連性があります。そしてアーティストの使用楽器と市場シェアにも長期的な関連性が見受けられます。

 これから楽器を始めようとする人々が、ギターを買いたいと思ったとき、ステージ上のアーティストが使用している楽器がほぼフェンダーなわけです。

 アコースティック市場でもシェアは絶大ですし、Fender PlayやFender Songsなどのデジタル製品、サービスなどもあって、ようやく「大手ブランド」になり得たのではないかと思います。

――ハイレゾブームなど、録音機材、楽器などにも新しい技術の波がやってきています。新時代のオーディオ、デジタルデバイスへの取り組みに関して教えてください。

ムーニー氏 スマホで音楽を気軽に聴けるようになって、ストリーミングサービスも増えて、ユーザーは音質よりも曲のラインアップなどのサービスを重視しているように見えますが、よりよい音で音楽を楽しみたいというニーズはあると感じています。

 その兆しを感じたので、我々は5〜6年前に、ナッシュビルにある「Aurisonics(オーリソニックス)」という軍事用や医療用のイヤモニ(IEM、インナーイヤーモニター)を作っている会社を買収しました。

 高級イヤモニの最大の市場は日本で、彼らの製品は日本のオーディオマニアが集うハイエンドな市場で成功を収めています。カスタムインイヤーモニターも作っていますが、音質やフィット感などが一般の製品と比べてはるかに優れているので、これを使ったら他のイヤホンは使えないでしょうね。

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