米国でテックジャイアントと呼ばれるGAFAになぞらえて、代表的な企業がZORCと呼ばれるほど注目されているのが不動産テックだ。大手各社の時価総額を並べると、Zillowが1兆1000億円、Opendoorが4100億円、Redfinが2500億円、Compassが6900億円となっており、1000億円以上のいわゆるユニコーン級企業が目白押しとなっている。
この分野への投資額も年々増加を続けている。その半分は米国、次いで中国、英国、インドと続くが、日本はその他の中に入ってしまう。
世界的に注目される不動産テックだが、日本で大規模スタートアップが続々登場とはならないのは、どんな背景があるのだろうか。
元リクルートで不動産ポータル大手のSUUMOを担当し、現在は米不動産テック大手のMovotoのバイスプレジデントを務める市川紘(こう)氏は、4つの象限に分けて分析するのが不動産テック業界の通例だと話す。
縦軸に不動産の買い手と売り手、横軸にサーチ(検索・検討)とトランザクション(内見→申し込み→交渉→契約)を置く。この4象限のどこを主戦場としているかを見ると、不動産テック各企業のポジションが分かる。
最初に不動産のテック化が始まったのが、買い手×サーチ領域だ。いわゆる不動産ポータルと呼ばれる領域で、日本だとSUUMOやHOME'Sなどが当たる。2000年以降、このジャンルでの競争が加速した。米国最大手はZillowだ。12年当時700億円だった同社の時価総額は、20年には1兆2000億円まで拡大している。
Zillowは当時の業界2位Truliaを買収し、このジャンルでの強者が確定したかに見えた。ここで出てきたのが、買い手に対して、サーチだけでなくトランザクションも提供するプレーヤーだ。いわば、不動産検索ポータルに仲介会社も合わせたモデルとなる。最大手はRedfin、2位に市川氏のMovotoが来る。
さらに、買い手と売り手の双方を対象に、トランザクション部分のプロセスをテクノロジーで進化させるプレーヤーが出てきた。急速に成長したCompassはこのジャンル最大手。未上場ながら時価総額は6900億円といわれている。
最後に、これまでオフラインの比重が高かった売り手向けのサーチ・トランザクション分野が、この2〜3年の間に伸びてきた。アルゴリズムで物件に価格付けをして、スピーディーな買い取りを実現するサービスで、一般にiBuyerと呼ばれる。最大手のOpendoorは時価総額4100億円に達している。
今回の記者向けイベントを主催したすむたす(東京都目黒区)も、国内唯一ともいわれるiBuyerの1社だ。新たな資金調達を行い、成長の制約だった資金額にめどをつけてきた。「売りたいというニーズはあったが、自社に資金がなかったので、毎月3物件くらいしか買えなかった。VCからの調達と銀行借り入れ可能額の合計が10億円に達し、月10物件までいけるようになった」(すむたすの角高広社長)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング