村上世彰に森永卓郎の息子が聞く「日本の経営者に必要なこと」――株主がガバナンスを利かせ白熱の経済論戦(3/5 ページ)

» 2020年02月06日 05時00分 公開
[森永康平ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

安定した雇用と適切な成果主義が必要

――自民党税制調査会が2020年度の与党税制改正大綱に向けて、内部留保を他の企業の合併・買収(M&A)に活用した企業には、税負担を軽減する優遇税制を検討しています。一方で、内部留保が投資に回るだけで、従業員には回らないとなると、家計という観点では問題がありますよね?

 絶対に給料を上げるべきです。日本は全体的に給料が低い。昔は「日本企業は給料が高い」と言われていたけど、そのころから一切伸びてない。頑張ったら給料を上げるということを、もっと明確にすべきです。

――いまはなくなりつつありますが、日本旧来の雇用や給与への考え方は終身雇用・年功序列でしたよね。あまり成果主義というのは馴染(なじ)まない気もします。

 そういうのはおかしいんです。年功序列や終身雇用がおかしいというより、安定した雇用が重要であって、それが保たれたうえで、結果に応じた適切な給与体系が必要なんです。成果主義というと嫌がられるでしょうけど。

phot

消費税よりも資産課税 就職氷河期世代への対策も必須

――株主や企業という観点から話を聞き、少し目線を家計に移してきましたが、その目線から続けさせてください。村上さんは昨年、世界的に大ヒットした映画『ジョーカー』は観ましたか? 『バットマン』に登場する最強の悪役ジョーカーが経済格差によって誕生する経緯を描いた映画ですが。

 観ていないですけど、内容は知っています。

――私はその映画を観たのですが、心から楽しめなかったんです。データでも確認できますが、既に日本でも格差は拡大し続けています。19年10月には消費増税をして、更に格差拡大を加速させたとも思います。そうなると、少し極端な意見になるかもしれませんが、このままでは日本でも「ジョーカー」が生まれてしまうんじゃないでしょうか。

 絶対に格差は縮小させないといけない。特に底辺層、低所得者の人たちには手を打たないと。誰が好き好んで生活保護費なんてもらうのでしょうか。もらわざるを得なくてもらっている人がほとんどですよ。そういう人たちが自分で働いて、一定の収入を得られるようになる機会を与えるべきです。

 いま一番対策すべきなのは就職氷河期の人たちなんです。高齢者の問題はある意味では仕方なくて、70歳まで働けっていうのは無理だから、そこには最低限の社会保証やベーシックインカムなどで対応する以外はない。だから、20〜40代で働ける人達には働いてもらって、生活保護が不要な状態にする。しかも、無理して生活保護をやめさせるのではなくて、楽しく不要になるようにすることが一番重要ですね。僕はそこに寄付してもいいと思っている。それをやらないと国はもたないですよ。

phot

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.