村上世彰に森永卓郎の息子が聞く「日本の経営者に必要なこと」――株主がガバナンスを利かせ白熱の経済論戦(2/5 ページ)

» 2020年02月06日 05時00分 公開
[森永康平ITmedia]
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保身をするのが日本の経営者

――前回は『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)の内容を基に取材しましたが、今回は『生涯投資家』(文藝春秋)の内容にからめて質問させてください。多くの日本企業は未だに内部留保を積み増しています。ゼロ金利の環境下で、現預金を貯めこんでも無意味であって、村上さん自身もアクティビストとして「もっと企業は効率的にお金を使え」と提言し続けていますね。

 なるほど。その件については数字を使って説明しましょう。1990年の日本の上場企業の時価総額は500兆円から600兆円だったんですね。そして、現在の時価総額も600兆円くらいです。90年当時の日本企業の純資産はだいたい200兆円強。そして、現在の純資産が500兆円。では増えた分、300兆円の中身は何か。それが内部留保です。

 利益剰余金は400兆円以上あった。これはどうなったか。バランスシート(貸借対照表)の左側は何があったか、というと現金だったわけです。お金がそこに寝ていたらだめですよ。それがぐるぐる回らないと、日本経済はよくならない。じゃあ、どう回すのか。

 解決策の1つは、もう意味のない内部留保をためこまないこと。日本企業の株を買っている投資家、株主、年金が議決権として「無駄な内部留保をやめろ」と声を大にして言うことですよ。

phot 取材前に実施されたN高での授業の様子

――なぜ日本の経営者は内部留保を投資や従業員に回さないのでしょうか?

 そのほうが楽だからだと思います。多くのサラリーマン社長がそういう思考回路であることはわかります。(内部留保をため込んだ方が)リスクはないんですから。

――でも、それは経営ではなくて「保身」ですよね?

 保身をするのが日本の多くの経営者です。それは仕方ない。一方で、それをきちんとガバナンスするのが株主です。なぜROE(株主資本利益率)という指標が生まれたのか。それはE(株主資本)を活用して、どれだけR(利益)を生み出すか、ということでしょう。

phot 「保身をするのが日本の多くの経営者です。それは仕方ない」と語る村上

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