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丸井グループ、「売らないお店」支援のD2C新会社発表 リアル店舗出店は“広告出稿の一つ”へ?新しい企業とお客の形(2/2 ページ)

» 2020年02月13日 05時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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「売らないお店」で勝負に出る

 丸井グループは「売らないお店」への方針転換を重視している。2015年からは、商品を仕入れて販売し、その差額を収益とする旧来の「百貨店型モデル」から、テナントを誘致して定期借家契約を結び家賃収入を得る「SC(ショッピングセンター)型モデル」へと刷新を進めている。

 19年3月期決算によると、「すでに定借化した面積」を「当初定借化として対象としていた区画面積」で除した「定借化率」は106%(6.6万坪)。16年3月時点では20%だった比率は、3年で5倍へと伸張し、定借化は完了。1年間での入店客も19年3月時点で2.1億人と、09年比で1.3倍に成長した。「これまで『売る』のが役割だったリアル店舗だが、オンラインが当たり前になった時代では売るだけではなくなっていくだろう。今後は『売らないお店』で勝負する」と青井社長は狙いを話す。

ビジネスモデル変革で来店客も増加(出所:丸井グループ2019年3月期決算説明資料)

リアル店舗の出店は“広告出稿”みたいなもの

 その「売らないお店」を体現するのがD2C企業だ。12年に設立し、オーダースーツの販売で成長を続けるFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ、設立時の社名はライフスタイルデザイン)もその一つ。

 同社は当初、お客が自分でサイズを測定し、データを入力してスーツをつくっていた。その後、リアル店舗で測定するスタイルへ変更する。お客は店舗へ行き、サイズを測定。測定したデータはクラウド上に保存され、いつでも参照できる。そのため、店頭でスーツを購入する必要はなく、家に帰った後、あるいは数カ月後にでも、好きなタイミングでサイトから注文できる。スタッフに売り上げのノルマは課していないといい、リアル店舗を「ショーケース」のように使っている。リアル店舗を出すことで顧客獲得コストは数10%改善し、客単価も2.5倍ほどに伸びたという。

 Web上でいくつかの質問に答えると、お客に合わせてカスタマイズしたシャンプーなどが届くサービス「MEDDULA」を展開するSpartyも、リアル店舗のノルマがない。お客との接点づくりとして、19年に有楽町マルイへリアル店舗を出店。来店したお客はタブレット端末などを使い、頭皮を測定。商品を購入する場合もタブレット端末で行い、売り上げはリアル店舗ではなくオンラインで計上する。ファブリックトウキョウと同じく、リアル店舗を「売る場」ではなく「接点づくりの場」として活用する好例だ。

 渋谷マルイに「SHIBUYA BASE」を出店しているBASEの鶴岡裕太社長は「これまではリアル店舗からECという流れだったが、最近はECから始め、うまくいけばリアル店舗を出店したいという人が増えてきた。リアル店舗の出店が、広告出稿に近いスタンスに変化しつつある」と話す。

発表会ではD2C各社社長らの座談会も開かれた

 ディーツーシーアンドカンパニーという社名には、「D2Cと仲間たち」という意味を込めたという。まだまだ日本で発展途上のD2C業界だが、丸井グループの仕掛ける新会社は「台風の目」となっていくだろうか。

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