積み立てだけでなく取り崩しも自動化 楽天証券が始めた投信定期売却機能の狙い(2/2 ページ)

» 2020年02月17日 07時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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 シニア層を中心に、高分配金を特徴とした投信が相変わらず人気だが、定期売却サービスはそのアンチテーゼでもある。「そもそも分配金があるのが納得いかない。分配金が高いとそれがいいと思いがちで、今も高分配のものが売れる。すると、運営会社もそういうファンドを作らざるを得ない。しかし本来は、自分でいくら売るか決めればいいはず」(長谷川氏)

 資産形成期には、分配金を出さなければ課税が先送りでき、その分の複利効果を受けられる。取り崩しにおいても、分配金は基本的にすべてが課税対象となるが、一部売却ならば取得価格分は課税対象にならないため、近い効果がある。さらに、問題になるのは高分配投信の運営の難しさだ。市況が悪化しても、顧客ニーズ的に分配金を減らすことが難しく、分配用の現金を常に用意し続けなければならない。本来の運用とは違った管理に時間を取られることになる。

山を登るだけでなく降り方が重要

 こうした想いを形にした定期売却サービスだが、機能面でもこだわりを持った。積み立てでは、定期的に一定額を積み立てる、いわゆる「ドルコスト平均法」が一般的だ。額を一定にすることで、拠出額もコントロールしやすい。

 ところが一定額の取り崩しにはリスクもある。運用中の資産は、相場によって変動するが、一定額を取り崩すと、相場が不調なときに大きな比率を引き出すことになってしまうからだ。相場が変動しているとき、好不調がどんな順序でやってくるかによって、資産を想定よりも早く失ってしまう場合がある。

 フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏は、「これを収益率配列のリスクという。こんなとき、定額ではなく定率で引き出すと、どんなマーケットでも残る資産額は同じになる」と話している。

 定期売却サービスでは、こうしたことも考慮し、一定額の自動売却のほか、一定率、また決めた期間での売却も可能にした。定率については、当初1%刻みの設定だったが、機能発表後のブロガーの反応を受けて急きょ0.1%刻みに変更したという。

 「確かに、月1%だと年にして12%を取り崩すことになる。けっこう大きい。ブロガーさんの声をすぐに反映した」(長谷川氏)

毎月の取り崩し額は、金額を指定したり、評価額の率を指定したり、受け取り期間を指定して一定口数ずつ受け取ったりと、選択肢を用意した

 次の展開としては、投信以外の商品についての定期売却の検討や、取り崩しを見据えた投信の提案を行っていくという。投信の紹介では、どれくらい増えるか、つまりリターンを軸にした提示が多かったが、取り崩し期はリターンよりも変動率、つまりリスクが重要になるからだ。

 「積み立てのときに必要な投信と、取り崩しのときに必要な投信は違う。例えばリーマンショックのとき、100万の資産が50万になったタイミングで10万円を引き出すと、元に戻すのに250%のリターンが必要になってしまう。取り崩し期では、できるだけ値動きの小さい投信を買う必要がある。どんな商品がいいのか、今後明示していきたい」(長谷川氏)

 楽天証券は、投信のプラットフォームだと長谷川氏。それをいかに使いやすいようにしていくか、ユーザーの声を反映させながら開発をしていくという。

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