第3次韓流ブームの真相――それでも中高年が韓国に「上から目線」な訳誤解だらけの日韓関係を問う(2/4 ページ)

» 2020年02月21日 07時00分 公開
[澤田克己ITmedia]
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10〜20代中心、中高年世代は巻き込まず

 さて第3次韓流ブームである。第3次韓流ブームの特徴の1つは、起点が「2016年から翌年にかけて」といった具合に、明確でないことにある。テレビや雑誌といった既存媒体を通じたドラマやK-POPへの接触が起点となったこれまでと異なり、第3次ブームは化粧品(コスメ)やファッション、食品などの「商品」がSNSで人気を呼ぶ形で始まったからだ。年齢層では10代から20代にかけての流行であり、中高年世代を巻き込んでいないことも、特徴として挙げられる。

 韓国政府系機関である韓国コンテンツ振興院の日本拠点がまとめた、第3次韓流ブームに関するリポートは、「日本で2015年を前後して10代、20代の女性をターゲットとした雑誌の休刊が相次いだ」ことと、2000年以降に生まれた女子中高生が「デジタルネイティブ世代」であることなどを、第3次韓流ブームの背景として挙げた。日本のエンタメ業界が中高生を見ていないという飯塚さんの指摘にも通じる(編集部注:元の本書で言及)。

 世代間のギャップはランキングにも如実に出ている。「日経TRENDY」誌の「ヒット商品ベスト30」を見ると、2004年には「冬のソナタ」が1位、2011年にはマッコリが7位、韓国発の健康食品「紅酢(ホンチョ)」が18位に入っているが、第3次ブームの時期である17年から19年のベスト30に韓国関連は見当たらない。

 一方で、女子中高生向けのマーケティング支援などを手掛けるAMF社による「JC(女子中学生)JK(女子高生)流行語大賞」では、2017年のヒト部門1位が韓国発のガールズグループ「TWICE(トゥワイス)」、モノ部門1位がフュージョン韓国料理の「チーズタッカルビ」、3位が韓国コスメ「ウユクリーム」だった。2018年は、モノ部門2位に韓国風に撮影できるプリクラ機で通称「ピンモン(ピンクピンクモンスター)」、3位に韓国風フュージョンスナック「チーズドック」、4位に日韓合同オーディション番組「プロデュース48」となった。

 ピンモンについては「撮影の説明は全て韓国語でされるため『韓国っぽ』として、インスタ上では「#ピンモン」で11万以上の投稿がされるなど女子中高生を中心に広がって」いると説明されていた。「韓国っぽ」は格好いいという意味だそうだ。

 そして、男性グループ「BIGBANG」のメンバー、D-LITE(テソン)を表紙モデルに起用して「ツウの韓国」という80ページ超の特集を組んだ講談社の女性誌「FRaU」2017年7月号は、発売直後からSNS上で大きな話題となり緊急増刷となった。2019年のオリコン年間ランキングでは、音楽ソフトの総売上金額で4位がTWICE、5位がBTSだった。ちなみに1位は嵐、2位が乃木坂46、3位がKing&Prince(キンプリ)である。

 違った観点からのアプローチも出てきている。家父長的な古い意識が残る韓国社会での女性の生きづらさを描き、韓国で100万部を超えた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の日本語訳が2018年12月に発売され、韓国の小説としては異例の14万8000部(2019年11月現在)というベストセラーとなった。日韓の作家10人による短編競作などを並べて「韓国・フェミニズム・日本」という特集を組んだ河出書房新社の季刊文芸誌「文藝」2019年秋季号は、1933年の創刊号以来となる86年ぶり2回目の3刷を記録した。

 韓流は日本以外の市場でも伸びている。韓国コンテンツ振興院によると、出版や映画、書籍などを含むコンテンツ産業の輸出額は2005年の12億ドルから10年に30億ドル、17年に85 億ドルとなった。かつては日本市場への依存度が3割以上だったが、最近は中国に台湾と香港を加えた中華圏のシェアが輸出額の5割近くを占めており、日本のシェアは2割を切っている。

photo 訪韓日本人女性・男性の世代別分布(韓国観光公社より)

 韓国を訪れた日本人数を男女別・世代別にみると興味深い傾向を読み取れる(表2・表3)。サッカーW杯のあった2002年と第2次韓流ブームのピークだった11年、そして18年を並べてみた。この間に女性の韓国訪問者数が大きく伸び、中でも若い女性の増え方が激しいことは一目瞭然である。一方で男性はどの世代を見ても、横ばいもしくは減少となっていた。

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