京都土産として人気の高い、つぶあん入り生八つ橋「おたべ」や、バウムクーヘン「京ばあむ」を製造・販売する、美十(びじゅう、京都市)が2025年3月に発売した「ふわふわおたべ」が若い世代を中心に人気を集めている 。
北海道十勝小豆を使用したこしあんに、国産バターを組み合わせた「あんバター」を、もち粉にメレンゲを合わせた生地で包んだ和菓子で、価格は5個入り810円。従来の生八つ橋とは一線を画す色合いや食感で、他の商品と比べて手に取りやすい価格帯でありながら、京都駅の土産物売り場で売上金額5位にランクインした実績を持つ。
新商品誕生の背景には、美十の看板商品であるおたべの購買層が高齢化しているという課題意識があった。新たな定番土産をどのように設計し、若者世代に届けたのか。「ふわふわおたべ」の舞台裏を、同社マーケティング部・広報課の山盛雅美氏に取材した。
そもそも「ふわふわおたべ」と「おたべ」は、どんな違いがあるのか? おたべは、米粉を使った薄い皮で、もっちりとした歯切れのよい食感が特徴の生八つ橋だ。定番のにっき味(甘くスパイシーな香りと、ピリッとした辛みが特徴の味)や抹茶味を筆頭に、多種多様な味わいのものが多い。
一方、ふわふわおたべは米粉ではなくもち粉を使用し、メレンゲを加えることで、口に入れた瞬間に空気を含んだような軽い食感を生み出している。雲を思わせる真っ白な見た目もこれまでの生八つ橋にはなかったものだ。
「当社が定義する生八つ橋=米粉を使用するという定義から外れるので、ふわふわおたべは正式には生八つ橋ではありません。三角形というおたべの伝統的な形を引き継ぎ、全く新しい商品として開発したのがふわふわおたべです」と山盛氏は話す。
ふわふわおたべを理解するには、その源流にあたる美十の看板商品・おたべを知る必要がある。
もともと京都で純喫茶を営んでいた美十は戦時中に店をたたみ、戦後1950年代から八つ橋の製造に取り組み始めた。八つ橋業界には当時35社ほどからなる協同組合があり、美十は最後発だったという。既存商品と同じことをしていては選ばれない――。そうした立場が、同社のチャレンジ精神を育んできた。
お詫びと訂正:2026年2月7日午前7時30の初出で、「戦後1950年代に店をたたみ」と記載いたしましたが、誤りでした。2月9日午後0時58分、タイトル・本文の該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。
当時、八つ橋といえば硬い焼き菓子か、シート状の生八つ橋しかなかった。そこで美十が1966年に販売を始めたのが、生八つ橋でつぶあんを包み、三角形に折った「おたべ」だ。この形状は、職人の手仕事に頼らずとも安定して作れることを前提にしており、京都土産として量産するための工夫でもあったという。
さらに美十は、その後も商品開発を続けてきた。定番の味にとどまらず、季節ごとの素材を包んだ限定のおたべや、食べやすい一口サイズの「こたべ」など、時代やニーズに合わせた派生商品を次々に発売。その背景には「常に新しいことに取り組まなければ生き残れない」という意識があった。
ローソンの車中泊は、単なる「場所貸し」ではない 見落とされがちな体験価値とは
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
年商54億円企業を「突然」継いだ兄弟 役員・社員が辞めていく中でも改革を続けたワケ
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング