まるで雲を食べている? 京都のヒット土産「ふわふわおたべ」、開発背景に看板商品の若者離れ(1/4 ページ)

» 2026年02月07日 07時30分 公開
[田窪綾ITmedia]

 京都土産として人気の高い、つぶあん入り生八つ橋「おたべ」や、バウムクーヘン「京ばあむ」を製造・販売する、美十(びじゅう、京都市)が2025年3月に発売した「ふわふわおたべ」が若い世代を中心に人気を集めている 。

 北海道十勝小豆を使用したこしあんに、国産バターを組み合わせた「あんバター」を、もち粉にメレンゲを合わせた生地で包んだ和菓子で、価格は5個入り810円。従来の生八つ橋とは一線を画す色合いや食感で、他の商品と比べて手に取りやすい価格帯でありながら、京都駅の土産物売り場で売上金額5位にランクインした実績を持つ。

若年層を中心に支持を集めている「ふわふわおたべ」

 新商品誕生の背景には、美十の看板商品であるおたべの購買層が高齢化しているという課題意識があった。新たな定番土産をどのように設計し、若者世代に届けたのか。「ふわふわおたべ」の舞台裏を、同社マーケティング部・広報課の山盛雅美氏に取材した。

生八つ橋の常識を覆す、新食感の「ふわふわおたべ」

 そもそも「ふわふわおたべ」と「おたべ」は、どんな違いがあるのか? おたべは、米粉を使った薄い皮で、もっちりとした歯切れのよい食感が特徴の生八つ橋だ。定番のにっき味(甘くスパイシーな香りと、ピリッとした辛みが特徴の味)や抹茶味を筆頭に、多種多様な味わいのものが多い。

生八つ橋「おたべ」(画像:美十 公式Webサイトより)

 一方、ふわふわおたべは米粉ではなくもち粉を使用し、メレンゲを加えることで、口に入れた瞬間に空気を含んだような軽い食感を生み出している。雲を思わせる真っ白な見た目もこれまでの生八つ橋にはなかったものだ。

「ふわふわおたべ」。生八つ橋よりも厚みがある(画像:美十 プレスリリースより)

 「当社が定義する生八つ橋=米粉を使用するという定義から外れるので、ふわふわおたべは正式には生八つ橋ではありません。三角形というおたべの伝統的な形を引き継ぎ、全く新しい商品として開発したのがふわふわおたべです」と山盛氏は話す。

 ふわふわおたべを理解するには、その源流にあたる美十の看板商品・おたべを知る必要がある。

 もともと京都で純喫茶を営んでいた美十は戦時中に店をたたみ、戦後1950年代から八つ橋の製造に取り組み始めた。八つ橋業界には当時35社ほどからなる協同組合があり、美十は最後発だったという。既存商品と同じことをしていては選ばれない――。そうした立場が、同社のチャレンジ精神を育んできた。

お詫びと訂正:2026年2月7日午前7時30の初出で、「戦後1950年代に店をたたみ」と記載いたしましたが、誤りでした。2月9日午後0時58分、タイトル・本文の該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。

 当時、八つ橋といえば硬い焼き菓子か、シート状の生八つ橋しかなかった。そこで美十が1966年に販売を始めたのが、生八つ橋でつぶあんを包み、三角形に折った「おたべ」だ。この形状は、職人の手仕事に頼らずとも安定して作れることを前提にしており、京都土産として量産するための工夫でもあったという。

八つ橋とえいば、硬い焼き菓子などが定番だった(画像:美十 公式Webサイトより)

 さらに美十は、その後も商品開発を続けてきた。定番の味にとどまらず、季節ごとの素材を包んだ限定のおたべや、食べやすい一口サイズの「こたべ」など、時代やニーズに合わせた派生商品を次々に発売。その背景には「常に新しいことに取り組まなければ生き残れない」という意識があった。

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