過去のアイデアからこれまでにない商品が生まれた。しかし、どれだけ良い商品だとしても、存在を知られなければ手に取られることはない。美十はこの商品を、どのように若者世代に届けたのだろうか。
その答えの一つが、商品そのものと同じくらい「見せ方」に力を注いだ点にある。開発の初期段階から重視していたのが、パッケージだ。社内デザイナーが商品コンセプトの検討段階から開発チームと議論を重ね、商品の魅力をどう伝えるかという世界観まで含めて設計している。
「若い世代にとっては、味だけでなく見た目も大事だと思います。まずは手に取ってもらえる設計にしたかったんです」と山盛氏は話す。
企画やデザインの軸に据えたのは「雲」。いかにも和菓子然とした表現ではなく、商品名の印象通り、軽やかさや新しさが伝わるパッケージにこだわった。表面に施した立体感のあるエンボス加工(表面に凹凸の模様や文字を押し付け、立体的に浮き上がらせる技術)や、天使のモチーフを随所にあしらったデザインは、その世界観を視覚的に伝える工夫だ。また、土産菓子ではあまり使われていない青を基調とすることで、売り場でも目に止まりやすい存在感を持たせた。
発売日の2025年3月14日には、京都駅で試食イベントを実施した。「来場者の方に試食していただくと、そのままお土産売り場で買ってくださる方も多かったんです。見た目や味への反応は想像以上でした」(山盛氏)
バラエティ番組での紹介も追い風となった。京都出身の出演者が番組内で「ふわふわおたべ」を取り上げたことで、若年層を中心にSNS上でも話題が広がった。「番組放送後はファンの方が買いに来てくださるケースもあり、想定していなかった広がり方でした」と山盛氏は振り返る。
こうした取り組みを通じて、発売直後から手応えは確かなものとなった。イベント後には「販売地域を広げてほしい」といった声も寄せられた。現在は京都市内のおたべ本館などの直営店ほか、京都駅構内や市内観光地の土産売り場へと販路を拡大。2025年6月には公式通販サイトでの取り扱いも開始し、若者世代へのリーチと認知拡大の両面で成果が見え始めている。
「若い世代に向けた商品として開発しましたが、実際には想定以上に幅広い世代の方に手に取っていただいています」と山盛氏。
「お土産で食べておいしかったので、通販でも買いたい」「人からもらって印象に残った」「子どもに勧められて知った」など、購入動機はさまざまだ。加えて、京ばあむで培ってきた「商品の見せ方まで含めて設計する」という考え方もふわふわおたべに引き継がれている。紙袋を含め、持ち歩かれることで自然と目にとまる設計は、商品名や世界観を伝える役割も担っている。
名前や形といったブランドの核は残しながら、食感・味・見せ方を大胆に更新する――ふわふわおたべは、おたべという定番商品に、新しい世代との接点を作った存在といえるのではないだろうか。
ローソンの車中泊は、単なる「場所貸し」ではない 見落とされがちな体験価値とは
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
年商54億円企業を「突然」継いだ兄弟 役員・社員が辞めていく中でも改革を続けたワケ
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング