美十のチャレンジ精神によって、「おたべ」は京都の定番土産の地位を確立したものの、やがて販売は伸び悩むようになった。八つ橋市場そのものが成熟期に入り、味や見た目のバリエーションも出尽くした中で、差別化が難しくなっていったためだ。
当時は京都土産として有名なのは八つ橋と漬物くらいで、洋菓子はほとんど存在していませんでした」(山盛氏)
定番はあるが、選択肢が少ない。そこで美十は、もう1つの柱として取り組んできたOEM事業の経験を生かし、2008年に「京ばあむ」を開発した。
発売からまもなく、京ばあむは修学旅行生をはじめ観光客にも広く浸透した。同社では現在、京ばあむが売上面での主力商品となっており、おたべと並ぶ同社の2大柱に成長している。
京ばあむのヒットを支えた要因は商品力だけではない。「京」という文字の中心をバームクーヘンが想起されるような、目を引くデザインにし、パッケージから手持ちの紙袋にまで採用した。売り場で目立つのはもちろん、購入者が京ばあむの紙袋を持ち歩くことで自然と他の人の目にとまるようになり、商品やブランドの認知拡大に大きく寄与した。
その一方で、見えてきたものもあった。「京ばあむの人気とは裏腹に、祖業であるおたべが若い世代に届いていないという状況が見えてきたんです」と山盛氏は当時を振り返る。
おたべは2026年に発売60周年を迎える。同社としても、あらためて幅広い世代に魅力を伝える必要性を感じていた。「そのためには、まず若者世代の興味関心をきちんと知る必要があると考えました」(山盛氏)
若い世代は、なぜおたべを手に取らなくなったのか。調査したところ、「あんこが得意ではない」「そもそも和菓子をあまり食べない」「洋菓子を好む」といった傾向がみえてきた。そこで同社は、従来の延長線上で商品を開発するのではなく、おたべという名前や三角形の形は残しつつ、切り口そのものを変えるという判断に踏み切ったのだ。
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