食中毒事件を乗り越えてモスバーガーが復活 消費増税を追い風にできそうな理由とは?長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2020年02月25日 14時50分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

独自性のある商品や施策が振るわなかった

 しかし、17年12月から既存店売上高は前年同月比減という状況が続いている。食中毒事件は不調に輪をかけたというのが正しい見方ではないだろうか。

 その点を同社広報にただすと「これまでは良い商品を出すと、お客さまが来てくれるものと考えていた」と回答。マーケティングの不在が不振の要因という認識だった。品質向上のみを考えて結果的に割高な商品を出し、外し続けたというわけか。

 モスバーガーの顧客単価は1000円ほどである。安倍政権になってからの2度に及ぶ消費増税もあり、消費者の可処分所得がなかなか上がらない中、「モスバーガーは高過ぎてハードルが高い」といった不満の声も聞こえてくる。モスバーガーの主力商品は300円台で、2品を注文してソフトドリンクやポテトなどを注文すると、1000円くらいになる。

 同社としては、いい素材を使ってよりおいしくという商品力をアップする方向に集中してきた。しかし、なかなかそれだけではお客は来てくれなくなってきていた。

 もちろん、その背景には、ニューヨークで「マクドナルドキラー」と呼ばれる「シェイクシャック」のような、素材や健康にこだわる新しい高級ハンバーガーチェーンが上陸してきたこともあるだろう。シェイクシャックは15年11月、東京・青山に1号店を出店して大行列となり、今では東京、横浜、静岡、京都、大阪に13店を展開している。

 ロサンゼルス発のうまみを引き出す調理法で知られる「ウマミバーガー」も進出してきた。17年3月には、東京・青山に日本1号店をオープンし、東京、横浜、大阪で8店にまで増えた。

 一方のモスバーガーは、17年末〜18年初頭にかけて「名古屋海老フライバーガー レモンタルタル」や「東北産豚の仙台みそ焼きバーガー」(東北地方限定発売)のようなご当地の食材を使ったバーガーや、マルゲリータのピザをハンバーガーで表現した「マルデピザ」など、創作性の高い期間限定商品を提案していたが、いずれも400円台であり、消費者から見て少々価格的に厳しかった。

マルデピザ

 また、夜のちょい飲み需要を狙って、ちょっとしたおつまみを出した。大人のハンバーガーでちょっと1杯という「モスバル」企画を進めていたが定着しなかった。シェイクシャックは、ブルックリンブルワリーが開発したオリジナルのクラフトビールも売りだが、モスバーガーの場合、お酒そのものに独自性が足りなかった面もあるだろう。

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