楽天と公取委、ひとまず“休戦” 「送料込みライン」問題、第2ラウンドは起こり得る?緊急停止命令の申し立てを取り下げ(2/2 ページ)

» 2020年03月11日 11時03分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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理論武装をする楽天

 楽天は柔軟な対応を取るとともに、“理論武装”も進める。6日の記者会見では、慶應義塾大学大学院法務研究科の石岡克俊教授が出した意見書を紹介。意見書では、今回の公取委の申し立てについて、「かなり特異な内容を有している」と表現し、送料込みラインの導入前に介入があったことについて、「新たなビジネスプランに対する事前の介入は、努めて慎重であるべきで、安易な介入は、企業行動を制約し起業家精神を委縮させることにつながる」と比較的強い文言で危惧が示されていた。

3月6日の記者会見で話す野原彰人執行役員

 また、石岡教授は3月9日に報道陣向けのセミナーを行っていた。石岡教授は今回の緊急停止命令について、「先例との比較」「法的位置付け」の2点から“違和感”を表明。セミナーの終盤には「拙速に過ぎる介入に思える」とも発言した。

“アメとムチ”によっては第2ラウンドも?

 公正取引委員会は、緊急停止命令の申し立てを取り下げはしたが、「本件違反被疑行為に対する審査については、継続する」としている。そもそも、送料込みラインの導入は、楽天市場内の「送料」がユーザーにとって分かりづらいことが理由。そのため、送料込みラインを導入する出店者としない出店者が出てしまっては、より一層分かりづらい状況になり、「本末転倒」にも思える。

 この件について楽天は「送料込みラインの準備を進めていただいている出店者らに配慮した」と説明している。また、送料込みラインに反対する意見については三木谷浩史社長が「(送料込みラインの)影響を受けるのは注文全体の8%」と話す一方で、送料込みラインに比較的好意的な出店者らの団体「楽天市場出店者友の会」については「建設的な意見を頂戴している」(野原執行役員)とするなど、“アメとムチ”のような対応に見える。

 いったんの“休戦”とはなったが、送料込みラインを導入した出店者としなかった出店者への今後の対応によっては、再び楽天と公取委が衝突する可能性もありそうだ。

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