ホンダは、主燃焼室に薄い混合気を、タコツボのような副燃焼室に濃い混合気という具合に濃度の違う2種類の混合気を導き、トータルでは薄い、つまり希薄燃焼させることに成功した。
副燃焼室で着火された火炎流が、細い通路を通って高速で主燃焼室に吹き出し、火炎流が薄い混合気をかき回しながら燃え広がる仕組みを作った。これがCVCC(複合渦流調速燃焼方式)である。独自の技術で「燃焼室での燃焼」の段階で問題を解決した優秀な技術だった。
ホンダは、独創的な副燃焼室を使った複合渦流調速燃焼方式(CVCC)によって、一躍世界からの脚光を浴びた
ホンダのCVCCシステムの作動図。左から、まずは黄色の濃い混合気と青の薄い混合気をそれぞれ副燃焼室と主燃焼室に導く。次に着火しやすい濃い混合気に副燃焼室で火花着火。燃焼で膨張した火焔流は、すぼめられた通路から主燃焼室に強い渦を作り出しながら噴出し、薄い混合気を火焔伝播に頼らずに一気に燃やす
ところが1973年にオイルショックが勃発して、省エネという新たな課題が加わってしまった。当時は休日のガソリンスタンドの営業を停止させるほどの緊急事態で、輪番制の限られたスタンドしか営業していない状態だった。
そうなると、サーマルリアクター方式は燃費面で立ち行かなくなる。そもそもトヨタと日産という当時の両巨頭の対策エンジンは、ドライバビリティ的にも酷い(ひど)有様で、「危険なほど遅い」といわれたトヨタのTTC-C(Toyota Total Clean System)や日産NAPS-Z(Nissan Anti Pollution System)は、結局アクセル全開領域を多用することになって実用燃費が悪かった。
ホンダはCVCCで希薄燃焼を成し遂げたため、この排ガス対策と省燃費の複合競争の勝者になったかに見えたが、技術トレンドが変わり、やがて時代の波に消えていった。
トヨタと日産は排ガスへの対策で後手に回り、ホンダ、マツダ、スバルに先を越された
いまさら聞けない自動車の動力源の話 ICE編 1
ここ最近、クルマの話題で、いろいろと耳慣れない単語が増えている。ICEやレンジエクステンダーやシリーズハイブリッド、マイルドハイブリッドなど、分かるような分からないような単語が多い。実はITmediaビジネスオンラインの編集部でも「クルマの記事は難しい」という声が出ているらしく、一度おさらいをしておこう。
トヨタがいまさら低燃費エンジンを作る理由
トヨタは2021年までに19機種、37バリエーションものパワートレインの投入をアナウンスしている。内訳はエンジン系が9機種17バリエーション、トランスミッション10バリエーション、ハイブリッド系システム6機種10バリエーションと途方もない。なぜいまさらエンジンなのだろうか?
内燃機関の全廃は欧州の責任逃れだ!
「ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも無くなって電気自動車の時代が来る」という見方が盛んにされている。その受け取り方は素直すぎる。これは欧州の自動車メーカーが都合の悪いことから目を反らそうとしている、ある種のプロパガンダだ。
ガソリンエンジンの燃費改善が進んだ経済的事情
ここ10年、自動車の燃費は驚異的に改善されつつあり、今やハイブリッドならずとも、実燃費でリッター20キロ走るクルマは珍しくない。なぜそんなに燃費が向上したのだろうか? 今回は経済的な観点から考えたい。
自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
今後期待の省燃費技術は?
ここ数年の自動車業界を振り返れば、「省燃費技術の時代だった」ということになるだろう。そうした中にあって押さえておきたい自動車推進装置は3つに代表される。
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