新型コロナウイルス感染拡大への恐怖から多くのデマが飛び交っており、一部の人はパニックを起してトイレットペーパーの買いだめに走っている。皆がこうした買いだめ(買い占め)に走れば、品薄になるのは当たり前なので、当然、こうした行動は自制した方がよい。
一方、ネットを中心に買いだめする人たちをバカにしたり、バッシングする人も多いが、彼らも買いだめに走る人と同様、冷静さを失っている。モノの生産や流通の仕組みというものを客観的に考えた場合、買いだめに走る人を安易にバカにすることはできない。
「自分は頭がよく冷静な行動を取れる人間だ」と思っているのなら、買いだめする人やその様子を報じるメディアを激しい口調でたたくのではなく、正しい情報を落ち着いたスタンスで発信すべきである。
日本人にとってトイレットペーパーは重要なアイテムのようで、1973年にオイルショックが発生した時も、商店の棚からトイレットペーパーがなくなるという事態が発生した。今回は、ネットを中心にトイレットペーパーは中国で作られているというデマが飛び交い、これが一気に拡散して、多くの人が店頭に押し寄せた。
この記事を読んでいる人は、既に理解していると思うが、トイレットペーパーについては約98%が国内で製造されており、中国における感染拡大の影響を直接受けることはない。従って中国での感染拡大でトイレットペーパーがなくなるというのは、現時点においては原理的にあり得ない(原材料の輸入先である南北アメリカ大陸に影響が及んだ場合には話は別だが、再生パルプを利用する比率はメーカーによって異なるので一概には言えない)。
だが、現実は(何でもきれいに答えがそろっている)学校の教科書のようにはいかない。
一般的にトイレットペーパーは、1人あたり1週間に1ロール消費される。日本の人口は1億2000万人なので、乱暴に言ってしまえば1週間あたり1億2000万ロールのトイレットペーパーが必要となるわけだ。各メーカーには約3週間分の在庫しかなく、通常は1パック購入している国民がちょっと余分に買っただけで工場の在庫は消滅してしまう。流通在庫もあるはずだが、卸屋や小売店は大量の在庫を抱えることはできないので(約1週間分)、これにも限界がある。
では、不足分を増産すればよいのかというと、それも簡単ではない。
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