“テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2020年03月19日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

新型コロナに便乗した攻撃、ロシアや北朝鮮からも

 今回の新型コロナでは、中国だけが攻撃者ではない。ロシアからの攻撃も確認されており、例えば、新型コロナの感染状況を示した世界地図が狙われたケースも報告されている。具体的には、世界有数の医学部を抱える米有名大学のジョンズ・ホプキンス大学のWebサイトにある新型コロナの感染分布図を、他のサイトで表示してそこにマルウェアを埋め込むツールがダーク(闇)ウェブで数百ドルで販売されていた。それが確認されたのは、ロシア系のハッカーたちが集うダークウェブの奥深くにある地下掲示板だった。マルウェアが仕込まれた似た分布図も確認されている。

 こうしたサイバー攻撃に使うツール(ウイルスなどのプログラム)は、技術力の高いロシアが地下掲示板で販売していることが多い。中国や北朝鮮の政府系ハッカーらが購入しているのが確認されており、その闇市場は、年間で3億ドル規模にもなる。

 例えば、攻撃に使う一般的なマルウェアなら5ドルから500ドルで手に入れることができ、ランサムウェア(身代金要求ウイルス)などは、10ドルから9000ドルくらいで購入できるといった具合だ。

 筆者がCIA(米中央情報局)のサイバー部門でトップにいた人物から直接聞いたところでは、こうしたロシアが開発するツールには、「カネのない日本人のプログラマーなども作成に協力している。ネットゲームの中やダークウェブなどでリクルートされており、欧米情報機関の間では、東京がリクルート場所になっていると知られている」という。

ダークウェブでの取引を利用して、サイバー攻撃が行われている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 少し話が逸れたが、「ハデス」と呼ばれるロシアのハッカー集団は、GRU(参謀本部情報総局)と関連ある組織として知られている。彼らも2月半ばから新型コロナを悪用した偽メールをばらまいている。ターゲットになっているのはウクライナだ。ハデスはウクライナ国内で、ウクライナ保健省を名乗った電子メールによって、国内で新型コロナの感染者が激増しているとのフェイク情報を拡散させ、社会に混乱を巻き起こそうとした。そうしたメールによって、実際にウクライナ人の恐怖を駆り立て、それがきっかけで暴動まで起きている。

 中国やロシアのように、新型コロナの拡大を見てサイバー攻撃を実施しているのは、北朝鮮も同じだ。「キムスキー」と呼ばれる北朝鮮のハッカー集団は、韓国の新型コロナの対応を説明した偽のメールを作成して、やはり添付ファイルにマルウェアを仕込んで韓国にばらまいていると報告されている。

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