コロナ相場においては、リーマンショック時を参考として、下落が比較的マイルドであった「電気・ガス」や「陸運業」といった企業群に着目している方も多いかもしれない。しかし、例えば「陸運業」でもとりわけ「鉄道会社」は、より注意深く収益の柱をみたほうがいいと筆者は考える。
今回は隠れ不動産銘柄の一つとして、首都圏で東横線などの鉄道事業等を展開する「東急」を分析してみよう。東急は、つい最近まで「東急電鉄」という社名だった。しかし、19年9月に社名から「電鉄」を外し「東急」となった。ここにもヒントが隠れているが、本質的には決算を見ると“隠れ”不動産銘柄であることが読み解ける。
先月公開された東急の19年度第3四半期決算によれば、東急は交通事業の他にも百貨店等の生活サービス事業や、ホテル・リゾート事業、そして不動産事業を営んでいることが分かる。
各事業を営業利益で比較すると、最も利益を上げていたのは交通事業の294億円だった。しかし、これはグループ全体の44.5%で半分以下。残りは、不動産事業や生活サービス(東急百貨店等)、リゾートといった不動産に関連する事業で成り立っている。
これをみると「東急」という企業の構造を語る上では、鉄道の乗客者数だけでなく不動産マーケットも同時に追跡しなければ、同社の収益構造を半分以上見落としたままだということが分かる。
事業が成熟した企業の中には、自社の保有資産を運用することで安定的な利回りを狙う戦略の企業も多い。非上場企業ではあるが、朝日新聞社なども不動産事業が収益の柱となっていることは比較的よく知られている。
このように、ある企業が業種分類や、私たちのイメージと全く別の分野で収益の柱を確保している例は決して少なくない。
大まかな業種では推し量れない“隠れ○○”銘柄かどうかは、証券取引ツールや、各社のWebページに掲載されている「決算短信」や「決算説明会資料」から、セグメント別の業績を報告した箇所で確認できる。
個別の企業決算を閲覧していくのが負担となる場合は、会社四季報(東洋経済新報社)を確認するとよいだろう。各個社名の隣にある「連結事業」欄では、セグメント別の売上構成比率と売上高営業利益率が記載されている。また、「海外」欄では国内と海外の売上構成比率が記載されている。
今後もコロナ騒動関連で、不動産以外にも思わぬ業種が打撃を被る可能性もある。一方で、コロナ騒動が早期解決し、不動産市況が急速に回復する展開もあり得るかもしれない。
その際に、「陸運業」などといった機械的なカテゴリ分類や、「東急電鉄」などといった言葉やブランドのイメージだけに頼らず、セグメント別の業績を気にする姿勢を持つことでコロナ騒動の影響を的確に判断できるようになるだろう。
中央大学法学部卒業後、Fintechベンチャーに入社し、グループ証券会社の設立を支援した。現在は法人向け事業コンサルティングを行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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