新型コロナでしぼむ個人消費に、食品添加物が“特効薬”となるかもしれないワケ小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

» 2020年03月31日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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「コト消費シフト」の思わぬ弊害

 こうした空間殺菌は、過去に今回のような事態が発生したことがないため、前例もなく、お役所の「お墨付き」があるわけではない。しかし、製造現場においては既に実績のある手法であり、現状を鑑みれば、いったん導入して消費者にその効果を説明しつつ、そうした努力に対して評価を委ねる、という選択肢がありうると思う。実際、今回のような緊急事態を踏まえ、一部の地方自治体などでは、アルコールなどの殺菌剤不足もあって、こうした微酸性電解水を中心とした安全性の高い殺菌剤を採用する動きがみられる。

 昨今、消費者の購買行動は「モノ」への支出から、「コト」への支出にシフトしてきたといわれて久しい。こうしたコト消費のほとんどは、人の集まる場所に出掛けていくことと一体の行動であり、人が集まる場所が失われる、または、避けざるを得ない、ということになれば、個人消費に与えるダメージは計り知れない。閉鎖空間での人口密度の低減(映画館や飲食店で離れて座らせるなどの施策)などと合わせて、こうした空間殺菌を実施することで、安全性の向上を訴えていくという、事業者側の自助努力としての有効性は試してみる価値があるのではないか。

 自分の生活を考えてみても、新型コロナウイルス禍による集合規制が進んできたことで、予定された会議、会合、面談、懇親会、宴会、飲み会のほとんどが中止になってしまった。正直、ビジネス活動がかなり阻害されたという感覚だ。経済活動とは人と人との情報のやりとりでできているし、最終的に意思決定をしていくためには、Web会議などもあるにはあるが、直接の面談によることが圧倒的に多いだろう。人と人とが会って話をする機会が減らざるを得なくなれば、経済への直接、間接でのマイナス影響は甚大なものになる。閉鎖空間の安全性を担保する空間殺菌に取り組むことで、特効薬が開発され、ワクチンが普及するまでの間、ウイルスとの持久戦になんらかの武器になるはずなのである。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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