幻想の5G 技術面から見る課題と可能性(1/4 ページ)

» 2020年04月01日 07時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 3月25日、NTTドコモが国内で5Gのサービスを開始した。5Gとは第5世代通信方式の略で、高速で大容量、そして低遅延という特徴を持ち、これまでになかったサービスが実現されるとしている。

 夢のように語られる5G。課題として指摘されるのは、エリア展開の遅さと料金面についてが多い。しかし、5Gを技術面から見た場合はどうか。NECの研究所で国際的な3G規格のコアメンバーを務め、その後九州大学教授、現在はメッシュネットワークを使ったネットワークプラットフォームを開発する、ピコセラの古川浩社長に聞いた。

3G規格のコアメンバーを務め、その後九州大学教授、その後ピコセラを起業し、メッシュネットワークを使ったバックホールネットワークの開発を行う古川浩社長

高周波数帯帯域を使い、帯域幅を広げる5G

 5Gの特徴の1つは、高速な通信速度だ。4Gの通信速度は約100M〜1Gbpsだが、5Gではこれが10倍以上の4Gbpsから20Gbps程度まで高速化されるといわれている。

 しかしなぜ高速化するのかを見ていくと、これがそう簡単な話ではないことが分かる。なぜ5Gは高速なのか。古川氏は、「高速化できる一番本質的な理由は、1キャリアあたりの帯域を取れるから」だと説明する。

 無線通信では電波を使ってデータを送る。このとき、使える電波の幅(帯域幅)が広ければ、それだけスピードは早くなる。

 4Gまでは、いわゆるプラチナバンドと呼ばれた700〜800MHz帯、そして3G開始の際に割り当てられた2GHz帯などが中心だ。これが、5Gでは新たにサブシックス(Sub6)と呼ばれる6GHz未満の帯域が新たに使われる。具体的には、3.6G〜4.6GHz帯あたりだ。さらに、ミリ波と呼ばれる27G〜30GHz帯も利用される予定だ。

4Gの2GHz帯に対し圧倒的に広い帯域幅が取れる、サブシックス(3.6G〜4.6GHz)、ミリ波(27G〜30GHz帯)を5Gでは利用する(ドコモ資料より)

 高周波数帯は、これまであまり使われてこなかったこともあり、広い周波数帯域を使いやすい。単純に見ても、700MHz帯の10%は70MHz幅でしかないが、7GHz帯の10%は700MHz幅となる。

 2GHz帯の4Gで通信各社に割り当てられている周波数幅は20MHz幅が基本だが、Sub6では100MHz/200MHz幅が、ミリ波では400MHz幅がそれぞれ割り当てられ、帯域幅が格段に大きくなることが分かる。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.