幻想の5G 技術面から見る課題と可能性(3/4 ページ)

» 2020年04月01日 07時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

低遅延は、インターネットを使うなら効果は薄い

 さらに5Gでは低遅延という特徴がある。通信を行う際のレスポンスの早さを示す。一般に4Gでは10ミリ秒の遅延があったところ、5Gでは10分の1の1ミリ秒になるといわれている。

 よく言われる活用例が、遠隔医療や自動運転だ。わずかな遅れが手術ミスにつながったり、自動車でいえば通信が10ミリ秒遅延している間に、時速60キロで走る自動車は15センチ進んでしまったりする。これらにリアルタイムで対応できるというものだ。

 ただし特定の用途以外でメリットが出るかどうかは疑問だ。「インターネット回線を経由すると、遅延はさらに大きくなるし揺らぐ。遅延の保証もできない。あまり関係ないのでは」と古川氏。実際、ある環境でインターネットの遅延(レイテンシ)を計測してみたところ、4G環境で41〜200ミリ秒、光回線でも5〜18ミリ秒の遅延があった。無線部分だけの遅延が減ってもネットワーク全体としては遅延は大きくなる。

 これが本当に効果を発揮するには、現在4G(LTE)のコアネットワークを利用しているNSA(ノンスタンドアローン)方式から、5Gのコアネットワークを使う5G SA(スタンドアローン)へ切り替わるのを待つ必要があるだろう。さらに、基地局上にサーバを設置し、インターネットを通らずにレスポンスを返せるエッジコンピューティングが実現すると、意味を持ってくる。

 現時点では、まさに特定分野での利用にメリットがある。「制御の分野では、早いレスポンスが必要だ。工場の中などで場所を決めて排他的な周波数を割り当てて使うローカル5Gの用途では有用だろう」(古川氏)

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