幻想の5G 技術面から見る課題と可能性(4/4 ページ)

» 2020年04月01日 07時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

現状、3Gから4Gになったときのような感動は、あまり得られない

 通信技術の進歩で見ると、アナログだった第1世代(1G)からデジタル化された2Gのインパクトは大きかった。いわゆる自動車電話から、100グラムを切るまで端末が小型化したのもこのころだ。

 さらに、2Gの9.6kbpsから一気に2Mbpsまで速度が上がった3Gも、利用用途に大きな変化をもたらした。携帯電話で初めてWebサイトを実用的な速度で閲覧できるようになり、写真の送付も当然になった。IMT2000というキーワードで世界標準化され、海外に行っても同じ携帯電話で通信できるようになったのも3Gの大きなメリットだ。

 4Gでは、3GのCDMAに対してより周波数を効率的に利用できるOFDMという通信方式を採用した。「4Gは、OFDMや高度な符号化方式などの適用により、理論的な通信速度の限界であるシャノン限界に近いところまでいった」と、古川氏は言う。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 5Gでは、これまでのような根本的な通信方式の変化はない。通信方式は4Gと同じOFDMのままだ。ここに複数のアンテナを同時に使うMIMOの強化や、電波に指向性をもたせるビームフォーミング、複数ユーザーの信号を重ね合わせて送るNOMAなどの技術、4Gと5Gを組み合わせて使う技術などの利用が想定されている。しかし、最大の違いは、やはりサブシックス、ミリ波といった新しい周波数を利用できるところにある。

 現時点の国内5Gは、サブシックス帯域に限られる。「5Gが広くあまねく使えるのにはかなり時間がかかる。サブシックスは普及が早いと思うが、周波数が低いとそれほどスピードが出ない。これでは4Gと何が違うのか。本当の意味で違ってくるのは、ミリ波帯域が併用になってきたとき。しかし、1〜2年どころじゃなく、もっとかかるのではないか。現状、3Gから4Gになったときのような感動は、あまり得られないだろう」(古川氏)

 スマホなどの機器では5Gの恩恵を感じにくい一方で、古川氏が期待を寄せるのがIoTへの5G搭載だ。「キラーアプリが何かという議論がこれから続いていく。IoTが本当のキラーではないか。スマホではなく、モノが本当につながってるときに意味が出てくるはずだ」

 4Gがスタートしたとき、何が本当の4Gなのか? という議論が盛り上がった。技術的にはあまり変わらなくても、マーケティング的ニーズから4Gを名乗りたい通信キャリアがある一方で、あくまで3Gの拡張だという意味で、3.5Gや3.9Gと名乗る場合もあった。そもそも現在4GとされるLTEも、ロング・ターム・エボリューションの略で、もともとは3Gの発展型という位置づけだった。

 新しい周波数帯域を使うという意味なら、5Gの定義とメリットは明確だ。しかし、4Gの周波数帯を使って5Gサービスを行おうとしている通信キャリアもある。5Gの限界とトレードオフについては認識しておきたい。

関連記事https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2003/24/news055.html,i

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2001/07/news037.html,i

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1911/21/news020.html,i

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2001/30/news021.html,i

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1705/12/news109.html,i

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.