フィンテックで変わる財務

STOと併せて注目のステーブルコイン Fintech協会 落合氏、神田氏インタビューフィンテックの今(2/4 ページ)

» 2020年04月01日 07時10分 公開
[中尚子ITmedia]

――具体的には現在、どのようなステーブルコインがあるのでしょうか。

落合 一番有名なのは、ドルペッグをうたった「テザー(Tether/USDT)」ですね。

神田 テザーについては、1ドルが1テザーにペッグされているとうたっていましたが、担保が十分ではないという議論が起こって、一時相場が暴落しました。現在、一番広く使われてはいるものの、ステーブルコインのペッグの仕方に注目が集まった事例でもありますね。

Tether

 それに対して、ジェミニドル(Gemini USD/GUSD)は1ドル=1ジェミニドルとしてドルが預託されていることが証明されており、そういう形で信頼を高めているステーブルコインもあります。イーサリアムを担保にしているメーカーダオ(MakerDAO)までを含めるとすると、法定通貨とペッグしているものとはかなり性質が違ったものになるでしょう。

――ステーブルコインであるテザーは、現在どのように使われているのでしょうか。

神田 仮想通貨同士の取引の仲介で使われるケースが多いと思います。例えば、仮想通貨同士で取引しようとするとボラティリティ(価格変動)が大きすぎるので、いったん仮想通貨をテザーに置き換えて、そこからタイミングを見て別の仮想通貨に乗り換えるというケースです。法定通貨を挟むよりも事務手数料が安かったり手続きが楽だったりするため、テザーが使われています。

――ステーブルコインが普及することによってどのようなメリットがあるのでしょうか?

落合 より多くの人がより容易に金融にアクセスできるようになります。国がシステムを適切に組んでいけば、トレーサビリティが高まり、ガバナンスも改善できるでしょう。また、ステーブルコインの枠組み次第ですが、通貨運用コストの削減効果が生じる可能性や、さらに現在のような危機局面において、国から個人に対して何らかの給付をする際の手段として利用されるケースも考えられます。

神田 Libraのような今後のステーブルコインは、どこの法定通貨建てでもない中立的なグローバル通貨の代替になる可能性を秘めています。為替の手数料を負担せずにグローバルな仮想通貨のネットワークで国境をまたいだ取引が完結できる、そんな利便性の高い決済手段になるのではないかと期待されている側面があります。

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