人口減少や少子高齢化など多くの課題を抱える日本の地方社会。金融に目を向けてみても、地域を支えてきた地方銀行の経営は厳しさを増している。こうした地方の課題をフィンテックはどう解決していくことができるのか。Fintech協会理事の神田潤一氏に聞いた。(聞き手はフリーライターの中尚子)
――現在、日本の地方が抱える課題をどのように考えていますか。
神田潤一氏(以下、神田) 私自身が青森県八戸市の出身であることから、地域の課題や今後の行く末についてはとても関心を持っています。日本の地方は今、少子高齢化や過疎などの課題に直面しています。地方でより顕著であるものの、これは日本全体の課題でもあり、他の先進国も近い将来、同じような道をたどるでしょう。そう考えれば、日本の地方は課題の最先端であり、ここで地方がこうした課題を解決して活力を取り戻すことができるかどうかが、日本や他国にとってもとても重要になってくるといえるでしょう。
――そうした課題解決において、フィンテックはどのような役割を果たすことができるのでしょうか。
神田 フィンテックは、高齢者を狙った詐欺の防止や認知症の方の資産保全対策などに役立ちます。例えば、家計簿などの購買状況を把握するアプリで、高齢者の収入・支出の動向を家族と共有し、普段と違う高額の支払いなどがあった時にお知らせするようなサービスが有効でしょう。一部のフィンテック企業と金融機関では、こうしたフィンテックの活用についての実証実験が既に始まっています。
「行動をデータにしていく」ということについては、キャッシュレスが追い風となります。キャッシュレスやスマートフォン(スマホ)というと、「高齢者には使いにくいのではないか」という指摘をよく受けますが、スマホを使える高齢者は年々確実に増えています。スマホで直感的に操作できるアプリは、実は高齢者にとっても使いやすいのではないでしょうか。もちろん、フィンテック企業も高齢者により使いやすいようなUIを開発していく必要があります。
同時に、キャッシュレスは金融機関の過疎化対策にもなります。過疎地域では支店やATMを維持するのが難しくなりますが、キャッシュレスが進めば拠点を統廃合してオペレーションコストを削減することがより容易になります。このような視点でみると、キャッシュレスは実は地方により親和性が高いといえます。
またキャッシュレスは、次世代移動サービスMaaS(マース:Mobility as a Service)や相乗りのライドシェアとも親和性が高いでしょう。高齢者がスマホを持つことで自分の居場所を発信し、そこに自動運転やライドシェアによって買い物や通院などの移動手段が提供され、利用する高齢者は支払いまで一気通貫に済ますことができるようになります。このように移動手段と決済が一緒になることで、高齢者に優しいサービスが拡大すれば、地方の抱える過疎化や高齢化といった問題を解決する一手となるでしょう。
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