とはいえ、ツールや制度がそろっていても、テレワークがすぐに浸透するわけではない。社内で「テレワークをしてもいい」という風土を醸成することが重要だ。それはKDDIでも例外ではなかった。
「過去には、上司の立場となる社員から『部下が目の前にいる状況で仕事をしたい』という意見がありましたし、『本当に仕事をしているのか分からない』『何か質問したいときにすぐに聞けない』という声もありました」(宮原氏)
こういった意見には、実際にテレワークをやってみて「できる」と感じてもらうしかない。KDDIは17年1月、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府が東京都および関係団体と連携して展開する「テレワーク・デイズ」に特別協力団体として参画した。
これをきっかけにテレワークを多くの社員に経験してもらい、社内アンケートを実施。まずは「ネットワークに接続しにくい」など不満が挙がったシステム面に対し、社内の情シス部門と連携しながら問題を解消していった。「今はさらに『モバイル・セントリック』(スマートフォンベースで仕事ができる環境)を進め、PCに限定しない仕事環境の実現を目指しています」(宮原氏)
ところが、全社的にテレワークを推奨しても、なかなか働き方の風土は変わらなかった。17年に続き、「テレワーク・デイズ」を18年、19年と実施し、19年には期間中に4800人の社員がテレワークを“経験”。経験を重ねることで、風向きは少しずつ変わってきたという。
「やるたびに効果を感じていますし、直近の社内アンケートではテレワーク実施者の9割が、仕事のやりやすさに対してポジティブな感想を持っていました。最初は不安があっても、実際にやってみると『テレワークでも仕事はできる』と思えるようです。“テレワーク食わず嫌い”なのかもしれませんね」(宮原氏)
一方で、「職場の様子が把握しにくい」「対面での打ち合わせができない」といったネガティブな意見もあった。確かに、リアルなコミュニケーションにまさるものはない。しかし、「集まって働くという旧来の常識をどのように脱出して、オンラインでのコミュニケーションにどうやって慣れていくかが鍵となる」と田中氏は分析する。
また、「テレワーク・デイズ」で3年かけてテレワークを大きく推進したことで、以前のネガティブな意見が減り、少しずつ風土は変わってきているという。「直近のアンケートでも、上司から見て、部下が裁量を持ってやることに対して『違和感がない』と答えた上司が大半を占めました。上司側も年々テレワークに慣れてきているようです」(田中氏)
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