テレワークを主導する働き方改革・健康経営推進室では、一風変わった試みをしている。同部署には約70人が在籍しており、過半数の社員が北海道から九州までさまざまな拠点に分散して働いている。そこでは、それぞれがWebカメラをつなぎ、顔を見ながら仕事をしているのだ。
「もともと大阪など違うオフィスで働くメンバーもいたので、コミュニケーションを維持するツールとして導入しています。『基本的には常にカメラをつないでおく』が組織のルール。離れて働くことに対して違和感をなくすため、部署として率先して取り組んでいます」(田中氏)
全員がカメラの前にいれば、たまにミュートを解除して、「ねえねえ」と特定の相手に話しかけられる。質問や雑談が気軽にできるので、リモートとはいえリアルに近いコミュニケーションができるようになった。しかし、カメラを常時接続しておくことに対して抵抗はないのだろうか?
「確かにその点は、最初は全員から『監視されているみたい』と言われました。でも、実際にやってみると何ともないですよ。感覚としては、会社にいるのと変わりません。部署全体で集まるのは3カ月に1回ですが、毎日カメラをつないでいるため、久しぶりに会う感じもない。不思議ですが、面白いです」(田中氏)
この手法が他部署にも伝わり、今は東京・神奈川・大阪に拠点を持つ物流部門でも拠点の様子を常にカメラで投影するようになったという。また、都内の交通混雑を回避するために実施した時差通勤でも大きな成果が出た。
本社のガーデンエアタワーでは、今まで全体の5割の社員が8時台に出勤していた。そのため、8時半から9時までのビルエントランスは大混雑し、エレベーターに乗るのも一苦労。到着してから自分の席につくまで15分かかることも少なくなかった。
そこで、出勤を8時前や10時以降にずらしたり、テレワークを推奨することで混雑を解消。朝の貴重な時間とエネルギーを浪費することなく、スムーズな出勤が可能になったという。このことは結果的に新型コロナウイルスの感染対策にもなっている。
世間に先んじてテレワークや時差出勤を積極的に活用したしたおかげで、今回の新型コロナ騒動でも社内で混乱は起きていない。「いつもよりテレワークや時差出勤を社員に強めに『お願い』する形で、現場は対応できている」と田中氏は明かす。
現在は新型コロナ対策で都から在宅勤務が呼びかけられているが、感染が収束したあともテレワークは広がり、浸透していくだろう。とはいえ、「われわれは猫も杓子もテレワークをやるべき、という一辺倒のスタンスでいるわけではない」と宮原氏は念を押す。
今は「テレワーク」という言葉が独り歩きしているが、テレワークそのものが“目的”ではないという意識を持つことが重要だという。働き方を変えることを目的にするのではなく、「社員が生き生きと活躍するために、多様な働き方ができる環境を作る」。その視点を忘れてはいけない。
「働き方の選択肢の1つとしてテレワークができることが大切です。テレワークはBCP(事業継続計画)や生産性向上などにもつながりますし、何よりも多様な社員がもっと活躍できるような環境を作り、それを根づかせていきたいと考えています」(田中氏)
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