ソーシャル・ディスタンシングは、“Physical distancing”=身体的距離を意味する「感染予防戦略」の一つです。
米疾病対策センター(CDC)は、「集団での集まりを避け、できるだけ人との距離(6フィート、およそ1.8メートル)を保つ」と定義していますが、世界自然保護基金(WWF)ではパンダ1頭分、キングペンギン2匹分と表現するなどウィットに富んでいます。
一方、「ソーシャル・ディスタンス」は、体ではなく心の距離のこと。相手との心理的距離を意味し、差別などの研究で用いられる言葉です。
ソーシャル・ディスタンスが近いと親密度(closeness)が増すが、遠いと親密度は減少すること、また、ソーシャル・ディスタンスの近い相手は類似性が高く、好意度も高い傾向にあることが、これまでの研究で確かめられてきました。
ソーシャル・ディスタンスを測る項目としては、相手と友人関係を持つことの困難さや一緒に働くことへの不安や当惑、近隣に居住することへの反対、自分や親族が相手と結婚することへの反対、などが用いられています。
重箱の隅をつつくようなことはあまりしたくはないのですが、かつて「政治家は言葉が命」と言われていたのに、最近は劣化ぶりがかなり目立ちます。
専門家の先生たちの記者会見の話が、一つ一つ確固たる根拠に基づいていて腑に落ちるのと対照的です。先生たちは「根拠」を示しながら、それが決して「完全」ではないという謙虚さを常に大切にしています。白と黒、黒とグレー、できることできないことの全てを「自分の言葉」で発信しています。
ところが、それらが政治家や役人の「言葉」に変わると、たちまち「信頼できない情報」になってしまうのが、残念でなりません。ましてや、政治家のパフォーマンスに専門用語がむやみに使われるのは、研究者の端くれとして我慢できない。研究者が「クラスター」「オーバーシュート」という用語を邦訳せずにそのまま使うのも、言葉を大切にしているからに他なりません。適切な邦訳をしないと、微妙な言葉の解釈のズレで研究そのものの価値や意義が変わってしまいます。かっこつけて英語を使っているわけではないのです。
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