新型コロナ対策108兆円が確実に「見掛け倒し」で終わる訳“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年04月14日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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給付金、大半の世帯に行きわたらぬ可能性

 では、取りあえず確保された10兆円の真水だが、効果はあるのだろうか。この金額のうち約半分は世帯への給付金なので、これがどのくらい支払われるのかで大きく変わってくる。

 減収となった世帯への給付金については、1世帯あたり30万円と金額的には十分な水準に設定された。だが、給付するための条件が厳しく、実際に何%の世帯に支給が行われるのかは不透明な状況となっている。

 基本的な給付条件は、2〜6月のいずれかの月収が減少し、世帯主の年収が住民税非課税の水準以下になった場合、もしくは年収が半減し、住民税非課税水準の2倍以下に落ち込んだ場合となっている。住民税非課税世帯というのは、単身者の場合、年収が約100万円、3人世帯の場合には約205万円とかなり低い。

 この数字は貧困ライン以下なので、減収を条件に給付金を受け取る場合、ここまで収入が落ち込まないと対象にはならない。一方、年収が半減というケースでは、確実に半減以下になり、かつ、半減後の年収が非課税水準の2倍以下に収まっている必要があるので、これもかなり厳しい条件といってよいだろう。

 少し分かりにくいかもしれないが、一般的な中間層の人は、仮に年収が大幅に減っても、ほとんどは給付対象にならないと思ってよい。政府は対象となる世帯を1300万世帯と見込んでいるが、収入が減収したことを証明する書類の提出が必要であることなどを考え合わせると、実際に給付される世帯はかなり少なくなるだろう。

 真水と呼ばれる項目の中核となっている4兆円の給付金ですら十分に支払われないとなると、経済対策の効果はさらに小さくなってしまう。一部の論者が政府に対して「ドケチ」と批判しているのは、決して極論ではない。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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