1世帯30万円というと一見多額だが条件となる所得制限はかなり厳しい。米国で夫婦子ども2人の世帯ならば3400ドル(約37万円)が無条件で配られるのとは大きな違いだ。しかも米国は4月に配るが、日本は早くても5月中という有りさまだ。
新型コロナの蔓延を阻止するためには、人の動きを止めることが不可欠だ。都市封鎖に踏み切っている欧米諸国と違い、日本は外出自粛要請にとどまっている。東京都の小池百合子知事は緊急事態宣言の発出後、百貨店や居酒屋などに営業休止を要請すると見られたが、国との調整の結果、居酒屋を含む小規模飲食店については営業時間の短縮要請などにとどまった。
営業休止を求めた場合、営業補償をどうするかという問題が浮上するため、国が首を縦にふらなかったということが背景にあるようだ。
耐え忍ぶ体力がある大企業はともかく、中小企業や個人事業主が経営する店舗などは、売り上げが激減すれば、耐え忍ぶことは難しい。小規模の飲食店などは、通常ならば毎日の売り上げが入ってくる「日銭商売」であるため、潤沢な「内部留保」を持っているところはほとんどないと見ていい。
売り上げが激減、いや、現状の場合、売り上げが消滅しているところも少なくなく、迫る月末の支払いにすら事欠くというのが現実だ。従業員の人件費や、家賃、仕入れ代金をどう支払うか。政府の支援金が出るのをのんびりと待っている余裕はない。
北海道・札幌のライブハウス「COLONY」が4月12日、翌日をもって店舗営業を終了し、4月末日で閉店すると発表した。2001年にオープンした180人収容のライブハウスで、北海道内外からさまざまなバンドが出演、人気を誇ってきた。
中国人観光客などに人気だった北海道では国内でもいち早く新型コロナの感染が拡大、2月28日には北海道知事が独自に、法的な裏付けのない「緊急事態宣言」を出し、外出自粛などを求めていた。その後、いったん感染者の増加は鈍化したが、ここへきて再び増え始めている。営業自粛などが続いた結果、2カ月あまりで閉店に追い込まれたことになる。
東京都内でタクシー事業を展開していた「ロイヤルリムジン」は、緊急事態宣言が出た翌日の4月8日に、ほぼ全従業員にあたる約600人を解雇すると発表した。「解雇して雇用保険の失業給付を受ける方が、従業員にとってメリットが大きいと判断した」というのが会社側の説明だった。
新型コロナウイルスの国内感染が発覚した初期にタクシー運転手の罹患が報じられ、義理の母親が国内感染者初の死亡者になったこともあり、タクシー利用を避ける人が増え、タクシー会社は軒並み苦境に立たされている。雇用調整助成金などの支給を待っていては、人件費負担で押しつぶされると経営者は考えたのだろう。政府や連合の幹部は解雇を批判しているが、会社としては止むに止まれぬ判断だったということだろう。
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