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ベルリン、厳戒ロックダウン下の働き方2日でシステム用意、即座に5千ユーロ助成金振り込み(4/5 ページ)

» 2020年04月15日 08時30分 公開
[Masataka KodukaITmedia]

テレワークだけで働いてきたベルリンの設計事務所

 さて、実際、Webアプリケーションをメインとする会社の場合、環境を構築すれば、会社に出社せずとも容易にどこからでも仕事はできる。Amazon Web ServiceやGoogle Cloud Platformなどクラウド上にサーバとデータベースを配置し、リモートアクセスのためのセキュリティ対策を確立。ソースコードをGitHubなどリポジトリ管理し、Capistranoなどでサーバにデプロイメントできるインフラを整え、そして人と人のコミュニケーションが必要な会議も、Zoom、Skypeなど各種メッセンジャーを利用するような環境だ。

 ドイツの不動産会社、Immowelt AGは4月9日、「コロナ危機によりホームオフィスが増加:現在、2人に1人の労働者が自宅勤務」(記事リンク)との調査結果を発表。ドイツ労働者の55%が自宅で仕事をしているという。もともと論理的かつ合理的な気風が強いドイツ。日本に次ぐ国内総生産(GDP)を持ちながら、国民の残業時間は格段に少ない。そのためか、ベルリンのスタートアップ企業ではフリーランスがテレワークで開発することが、ごく当たり前のことになっている。筆者自身もITエンジニア/プログラマーとしてベルリンの複数のスタートアップ企業と仕事をしてきたが、全プロジェクトがテレワークだ。

 別の事例も見てみよう。ASOBU GmbHはドイツを拠点とする建築・都市計画の設計・エンジニアリング事務所だ。「持続可能な社会づくりのために、自らの暮らし方や働き方から持続可能にする」をモットーに、欧州の建築・都市計画ノウハウを生かした、環境負荷の低い建築設計、コンサルティング、環境シミュレーションを事業の柱としている。国外の企業や自治体、教育機関向けにワークショップや研修を行い、環境建築や“長持ちする”街づくりについて学ぶ機会を提供している。共同代表の金田真聡さんは語る。

ドイツを拠点とする建築・都市計画の設計・エンジニアリング事務所ASOBU GmbH(同社Webより)

 「建築や都市計画において、環境面や快適性を重視すると、経済性や安全性、工法といった一般的な要素に加え、光・風・音・熱・空気質・エネルギー使用量など、考慮すべき要素は非常に複雑で多岐に渡ります。またプロジェクト規模の大きさから、モックアップを作成するのは容易ではありません。竣工(しゅんこう)後に不具合が起こった場合、重大な経済的損失や環境への影響が発生します。そういった観点から、環境シミュレーションをはじめとして設計のIT化に注力しています。一般に労働負荷が高く、長時間労働になりがちな建設業界の傾向を改善するためにも、ITは有効であり、環境シミュレーション技術とも非常に親和性が高いと感じています」

 建築設計プロセスではGrasshopper(ビジュアルプログラミングツール)を駆使した新たな設計アプローチを採用。最適化を短時間で行い、BIM(Building Information Modeling)に連動させている。「Grasshopperの最適化・自動化機能によって、人が行うよりはるかに多くのパターンを検証することができるため、メンバーの労働負荷の削減に貢献しています。それにより本来、人間にしかできないクリエイティブな業務に集中できます。またENVI-metという都市環境シミュレーションソフトを導入し、属人的な経験則に頼らない客観性の高いシミュレーション結果をドイツ企業にも提供しています」

 コロナ危機の影響についてはどうか。「ドイツとその近隣国における環境建築や街づくりの視察スケジュールが延期されました。また世界最大の窓関連の建材メッセ『Fenstarbau Frontale』や、照明技術メッセ『Light + Building』、設計技術のワークショップなども相次いで延期となりました」

 「ですが、受注ずみ建築設計やコンサルティング関連の進行中プロジェクトに関しては、テレワークでの業務フローづくりを弊社設立当初から徹底してきたため、影響は一切発生していません」と金田さんは続ける。もとから自宅作業・テレワークで経済活動を行ってきたため、影響がほとんどなかったのである。

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