「原油先物価格初のマイナス」が暗示――“コロナ後”に価値が消滅する意外な業界とは“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年04月28日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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大激変、まずは「不動産業界」に

 日本国内でもコロナ後には、従来の常識が一変する業界が出てくる可能性が高いのだが、その1つは不動産である。これまで繁華街やビジネス街の交差点に面しているビルの1階というのは、とてつもない賃料相場となっていた。銀行やコンビニ、飲食チェーン店など、あらゆる業界がこぞって、この場所に店舗を構えることを望んだからである。

 しかしコロナ後の社会では、銀行はさらに店舗網を縮小して サービスのIT化を進め、外食産業はデリバリー対応を強化するだろう。すでに店舗過剰が指摘されているコンビニも、同じ水準の店舗網を維持するとは思えない。そうなると、極めて高額の家賃を支払ってでも、交差点に面した場所に店舗を構えるという企業は少なくなり、こうした物件の相場は大きく崩れる可能性が高い。

photo 新型コロナの影響で既にUberEATSなど外食のデリバリー化が加速している(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 この話はたかが不動産の賃料とは考えないでほしい。不動産というのは私たちの生活に密接に関わっており、あるカテゴリーの賃料相場が変化すると、不動産の利用方法が大きく変わり、最終的には私たちのライフスタイルにも影響を与えるのだ。社会のIT化が高度に進んだ場合、不動産がどのように利用されるのか現時点で詳細に予測するのは不可能だが、思ってもみなかった変化が起こる可能性は高いと筆者は考える。

 今、休業要請で大変な状態となっているイベント関係も、コロナがいったん落ち着けば営業を再開するだろう。だが中長期的に感染症は事業における大きなリスク要因であり、この業界の基本的な価値観も大きく変わる可能性が高い。イベントの在り方が変化すれば、当然、私たちのライフスタイルにも変化が訪れるはずだ。

 このほか、テレワークの普及でスーツの需要がさらに減ったり、訪問営業という手法や、長時間の通勤も消滅に向けて動き始めるかもしれない。一連の話は、社会のIT化によって起こる変化と言われてきたものばかりだが、コロナをきっかけに一気に加速する可能性が高まっている。少なくとも、従来の「価値」や「価格」の概念はいったん、リセットするくらいの覚悟が必要だろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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