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コロナを経て私たちの暮らしや価値観は本当に「激変」するのか働き方は変わりつつあるが……(2/3 ページ)

» 2020年05月15日 13時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

テレワーク化で「住まいの価値観」は変わるか

宗: 確かに、あの震災時は一時的な自粛や避難が起きたが、(被災地以外で)日常的な行動が大きく強制的に変えられたわけではない。会社にも飲みにも行けていた。心理的な影響は一時的なものだった。

photo 宗健(そう たけし)。麗澤大学経済学部経営学科客員准教授、大東建託賃貸未来研究所長・AIDXラボ所長。住環境や暮らしにまつわる消費者研究を長く手掛ける。リクルート住まい研究所所長などを歴任後、現職。

 ただ、今回のコロナは震災と違って「行動」レベルでの変化となった。しかもこうしたテレワーク化は、(働き手側から)かなり好意的に感じられているはずだ。確かに今回のコロナ騒動でも、「ホワイトカラーの仕事のやり方」についての変化は元に戻りにくいと考えられる。

――ただ、在宅勤務で長時間家にいるようになれば、自然と「住むこと」の価値観も変える、という考え方はあり得ると思うのですが。例えば通勤時間や経路をあまり気にせず住まいを選ぶような……。

宗: 「住」の方の価値観は、案外変わらないと思う。そもそも住まいとは制約条件が多すぎて、変えにくいものだ。住宅ローンがある持ち家をこの状況で買い替える人は少ないだろう。

 テレワークを強制されても、金銭的なデメリットのような制約条件はあまりないが、住まいはそもそも条件が多すぎて変えられない。地域社会とのつながりや、子どもがいれば学校のこともあり、簡単には引っ越せない。

 仮に、時差通勤や週1〜2回のみの出勤になれば、郊外に引っ越すという選択肢はなくもない。ただ、通勤以外の要素として「住み慣れた場所の方がいい」「繁華街で飲んで帰るので、やはり都心に住みたい」と、人はいろんなことを考えて住まいを選択する。

 「住みたい街ランキング」のアンケートなどで、郊外や地方の人気が出るかもしれないが、実際に引っ越すといった社会的影響は極めて小さいと考える。人は案外、保守的なものだ。

――ただ、3・11直後は「東京志向を止め地方へ移住しよう」といった動きがよく報道で取り上げられました。

宗: 確かに当時、「湾岸エリアの一部マンションが停電で暮らせず出ていった」というような話はあった。メディアに「地方に引っ越した」話がいっぱい出た一方で、実際に移住した人数は微々たるものだったはずだ。金銭的に余裕があり、仕事の自由度もあるような人に限られていたからだ。

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