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» 2020年05月26日 08時00分 公開

“いま”が分かるビジネス塾:好況でないのに30代貯蓄急増、それでも老後が安泰でない深刻な訳――肝心の「経済成長」どう果たす? (1/3)

好景気とは言えない中で特に30代の貯蓄が急増。老後生活の成立には貯蓄だけでは不足と筆者は指摘。消費者不安の中で必要な経済成長を果たす秘訣とは?

[加谷珪一,ITmedia]

 ここ数年、30代を中心に現役世代が急ピッチで貯蓄を増やしている。背景となっているのは、言うまでもなく公的年金など社会保障制度に対する不安である。このところ個人消費の低迷が続いているが、将来を不安視した消費者が支出を抑制していることが大きく影響している。

 将来不安から消費を抑制するのは当然のことであり、逆に言えば、この将来不安を解消できない限り、日本経済を成長軌道に戻すことは難しい。

photo 比較的若い層でも増加する貯蓄、しかし将来は安心なのか?(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

加速し続ける老後不安

 明治安田生命が4月に行った「家計」に関するアンケート調査(全国の20〜79歳既婚男女1620人にWeb上で実施)は驚くべき結果だった。2020年における調査対象者全体の平均貯蓄額は1512万円となっており、18年との比較で25.7%も増加した。当たり前のことだが、好景気の結果として貯蓄が増えたわけではない。

photo 3年間の平均貯蓄額の推移(明治安田生命「家計」に関するアンケート調査)

 貯蓄の目的としては、将来のため(65.5%)、いざという時のため(58.3%)という回答が圧倒的に多く、子どもの教育資金、家族旅行、マイホームなどを大きく引き離している。貯蓄が増えた最大の理由は公的年金制度に代表される老後に対する不安と考えて間違いないだろう。

 年金が危機的な状況にあることはかなり前から指摘されてきたが、正面から議論されることはなかった。ところが19年に「老後2000万円問題」など想定外の出来事が起こり、多くの人が年金について関心を高める結果となった。

 日本の公的年金は賦課方式となっており、現役世代から徴収する保険料で高齢者の生活をカバーする仕組みである。現役世代の人数が少なくなれば、その分だけ高齢者への給付は減らさざるを得ない。賦課方式の場合、制度として破綻することはないが、実質的に年金として機能しなくなることは十分にあり得る。筆者の試算では、現時点との比較で2〜3割の減額は必至である。

 政府は企業に対して70歳までの継続雇用を求めており、日本は事実上の生涯労働制度に移行しつつあるが、70歳まで同じ水準の年収が維持できる保証はなく、人によっては体力的な衰えも無視できないだろう。

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