しかも中国政府は、電子商取引大手のアリババ集団、ネットサービス大手のテンセント、ネット検索大手のバイドゥ、電子機器大手のファーウェイといった企業に対し、多額の投資を行っている。投資や補助金、税控除など、この分野をリードしようとしてなりふり構わず金銭的なサポートをしている。米国が「競争をゆがめている」と糾弾してきた産業補助金も提供される。筆者の米政府関係者への取材では、ファーウェイに対して中国政府は10兆円ともいわれる補助金や投資を提供しているという。
とにかく、シュミットは、中国がこうしたデジタルインフラの拡充を官民挙げて急ピッチで実施しており、「スマートシティ構想」を推し進めていると指摘する。実際に杭州では、アリババが「City Brain(シティ・ブレイン)」構想によって、AIが都市を管理するという実験を行っている。こうした実験的な都市計画でAIにデータを集めて学習させることで、AIが管理する合理的でスマートな都市機能が人々の暮らしをサポートすることになる。そこからいろいろなサービスが生まれ、国外へもテクノロジーを輸出できるようになるだろう。
シュミットは、こうした全てが米国よりも断然先を行っており、米国はかなり力を入れないと、近い将来“中国の時代”になってしまうと警鐘を鳴らしている。
確かに、中国はやりたい放題でデータをAIに蓄積させて、精度や能力を高めている。中国がこれからの世界を形作っていくAIや先端テクノロジーで覇権を握れば、世界の景色は一変するだろう。それは、中国共産党が国内で反体制勢力を弾圧したり民族浄化を図ったりしていることを見ればある程度は想像できる。
とにかく、米国も負けじと同じようなインフラ構築をし、未来の覇権につながるこの分野をリードすべきだとシュミットは主張している。
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